6月より拡充された労働基準監督機関から公取委員会等への通報制度
国による過重労働対策が進められていますが、下請企業において長時間労働が行われているケースが見受けられ、この対策として下請取引の適正化が重要であるとされています。そのため、以前より、労働基準監督機関から公正取引委員会・経済産業省との通報制度等が実施されいますが、今年6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」において、「長時間労働の背景として、親事業者の下請代金法・独占禁止法違反が疑われる場合に、中小企業庁や公正取引委員会に通報する制度を構築し、下請などの取引条件にも踏み込んで長時間労働を是正する仕組みを構築する」とされました。
これを受けて、厚生労働省では労働基準監督機関において、事業場に対する監督指導を実施した結果、労働基準法第24条(賃金支払)違反や同法第32条(労働時間)違反等の労働基準関係法令違反が認められ、その違反の背景に親事業者による下請法第4条の違反行為に該当する行為または特定荷主による物流特殊指定に該当する独占禁止法第19条の違反行為に該当する行為(いわゆる「下請たたき」に当たる行為)が存在しているおそれのある事案を把握した場合、公正取引委員会または経済産業省に通報するとしました。今回の「ニッポン一億総活躍プラン」により、この通報制度の対象として労働基準法第32条(労働時間)違反等が追加され、拡充されています。
また厚生労働省では、今年度、トラック運送業について取引慣行の見直しを通じた手待ち時間の削減等のモデル的取組を実施したり、IT産業における重層下請構造の下での発注の在り方と長時間労働の一体的改善に向けた取組を実施するなど、取引の在り方や業界慣行に踏み込んだ取組を業界や関係省庁と連携して行うことにしています。今後は、トラック運送業・IT産業を中心に、下請取引の適正化を図るとともに長時間労働の改善に向けた取組みが求められます。
関連blog記事
2016年4月5日「発表された労働局による新たな過重労働対策 「かとく」担当官を全労働局に配置」
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2015年7月6日「ABCマートを書類送検した「かとく」過重労働撲滅特別対策班とは」
http://blog.livedoor.jp/otsuakinori/archives/44638154.html
2016年2月26日「過重労働解消キャンペーンによる監督署調査 対象事業場の73.9%が法令違反」
https://roumu.com
/archives/52097948.html
参考リンク
厚生労働省「中小企業における労働条件の確保・改善に関する公正取引委員会・経済産業省との通報制度等について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000125971.html
(福間みゆき)
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