過重労働解消キャンペーンによる監督署調査 対象事業場の73.9%が法令違反

過重労働解消キャンペーンによる監督署調査 厚生労働省は昨年11月に「過重労働解消キャンペーン」を実施し、労働基準監督署による重点監督など進めましたが、先日、この実施結果が発表されました。今回行われた重点監督は、長時間労働削減推進本部の指示の下、長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業場や、若者の「使い捨て」が疑われる事業場など、労働基準関係法令の違反が疑われる事業場に対して集中的に実施されたものになります。

 その結果を見てみると、対象となった5,031事業場のうち3,718事業場(73.9%)において労働基準関係法令違反があり、主な違反内容は以下のとおりとなっています。
違法な時間外労働があったもの:2,311事業場(45.9%)
 うち、時間外労働※の実績が最も長い労働者の時間数が
 月100時間を超えるもの  :799事業場(34.6%)
 うち月150時間を超えるもの:153事業場( 6.6%)
 うち月200時間を超えるもの: 38事業場( 1.6%)
 ※法定労働時間を超える労働のほか、法定休日における労働も含む。
賃金不払残業があったもの:509事業場(10.1%)
過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:675事業場(13.4%)

 このように重点監督実施事業場の約半数で違法な時間外労働が行われており、過労死ラインである月100時間を超える事業場の数は990事業所と前年の903事業所よりも87事業所ほど増えています。

 次に、健康障害防止に係る指導の状況について見てみると、対象となった5,031事業場のうち2,977 事業場(52.9%)において、長時間労働を行った労働者に対し、医師による面接指導等を実施することなどの過重労働による健康障害防止措置が不十分なため、指導が行われています。そしてこのうち、時間外労働を月80時間以内に削減するように1,772事業場(59.5%)に対して指導が行われています。

 また指導事例として、以下の10個が紹介されています。企業としては該当する業種を参考にしながら、問題となる取扱いがあれば早めに改善していくことが求められます。
[学習塾]
 事業場の半数以上の労働者に月100時間を超える違法な長時間労働を行わせるとともに、割増賃金を適正に支払っていなかったほか、特に、学生アルバイトについては、担当する授業の時間帯のみを労働時間として取り扱い、割増賃金を支払っていなかったもの
[建設業]
 事業場において、最も長い労働者について月約200時間の違法な時間外労働を行わせ、かつ、衛生委員会において長時間労働による健康障害防止対策についての調査審議を行っていなかったもの
[コンビニエンスストア]
 最も長い労働者で月200時間を超える違法な時間外労働を行わせるとともに、正社員には全く割増賃金を支払わず、また、アルバイトについては、毎月一律に10時間差し引いた時間を労働時間として取り扱い、割増賃金を適正に支払っていなかったもの
[道路貨物運送業]
 長時間労働などを原因とする労災請求(脳・心臓疾患を発症)があった事業場において、労災請求者に対し6か月連続で月100時間を超える違法な時間外労働を行わせていたほか、深夜業に従事する場合の健康診断を実施していなかったもの
[接客娯楽業]
 労働条件を書面で明示せずに学生アルバイトを使用し、時間外・休日労働を行わせてはならないにもかかわらず、月約100時間の違法な時間外労働や休日労働を行わせ、割増賃金を適正に支払っていなかったもの
[飲食業]
 同系列の2店舗において、36協定の締結や届出なく、最も長い労働者で月120時間を超える違法な時間外労働や休日労働を行わせ、さらに、休日労働や深夜労働に対する割増賃金を一切支払わず、賃金台帳に時間外労働時間数などを記入していなかったもの
[旅館業]
 36協定の労働者の過半数代表者を適正に選任していなかったほか、最も長い労働者で月200時間を超える違法な時間外労働を行わせ、かつ、休憩時間を一律に30分単位で切り上げて扱うことで法定の休憩時間を与えていなかったもの
[製造業]
 7割を超える労働者に36協定の特別条項で定めた回数(年6回)を超えて違法な時間外労働を行わせ、かつ、6割を超える労働者について、月100時間を超える違法な時間外労働(最も長い者は月約160時間)を行わせていたもの
[情報処理サービス業]
 長時間労働などを原因とする労災請求(精神障害を発病)があった事業場において、10名を超える労働者について月100時間を超える違法な時間外労働(最も長い労働者で月約160時間)を行わせ、かつ、割増賃金を適正に支払っていなかったもの
[小売業]
 長時間労働などを原因とする労災請求(精神障害を発病)があった事業場において、複数の労働者に対して36協定の上限時間である140時間を超える違法な時間外労働(最も長い労働者で月約180時間)を行わせ、かつ、衛生委員会の構成員に労働者を代表する者を参加させていなかったもの


参考リンク
厚生労働省「平成27年度「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果を公表」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000113029.html

(福間みゆき)

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