うつ病の症状がある社員をそのまま働かせてもよいのでしょうか?

 最近、働く人のメンタルヘルス不全が社会的な問題になっているが、服部印刷でもうつ病の症状のある女性社員が出た。この対応に関し、大熊は服部社長から症状のある社員を働かせてもよいかどうかについての相談を受けた。



服部社長服部社長:
 まずわが社として、うつ病の症状のある社員の症状や状態の確認をすることは分かりました。次の課題ですが、そもそもこの社員をこのまま働かせても良いのでしょうか?また、働かせる場合には、どの程度働かせたら良いのでしょうか?
大熊社労士:
 基本的にうつ病の症状を抱えながら出社させ、働かせることはお勧めできません。その理由として、うつ病の治療は薬(抗うつ薬)の服用と休息、カウンセリングの3つが大原則といわれており、休息が十分に取れない場合は症状を悪化させる可能性があるからです。
服部社長:
 それは分かりますが、どうも本人は自宅にいても休息にならないらしく、職場にいた方が気分的に楽だと同僚に話しているようなのですが、それでもダメでしょうか?
大熊社労士大熊社労士:
 そうですね、薬を服用することで仕事ができそうな状態であり、また専門の医師から軽作業なら働かせてもよいという診断が出ていれば、働かせてもよいでしょう。うつ病というだけで会社が一方的に休ませてしまうと、本人に大きな不安を与えてしまうことになり、症状にも悪影響を与え兼ねませんから。
宮田部長:
 もしそのような場合、通常どおりの業務内容で働かせてよいのでしょうか?
大熊社労士:
 うつになった場合、どうしても判断力や決断力などが普段より落ちてしまいます。また疲労しやすくなるため、通常の仕事やルーチンワークが負担になりがちですので、通常の作業ではなく、単純な事務処理などの別の軽作業をさせるようにしたほうがよいでしょう。
宮田部長:
 その彼女は、いたって真面目な社員なので、頑張って通常の仕事をしたいと言い出すように思うのですが、そのときはどうすればよいでしょう?
大熊社労士:
 一般的にうつ病になりやすい人というのは、真面目で仕事ができる人が多いといわれています。したがって、本人は無理して通常の仕事をすることを望まれるかも知れませんが、まずは治療を優先し、治療に適した働き方をするように話をして、理解させて下さい。通常の仕事をさせているとなかなか休息が取れませんし、また取ろうとしないでしょうから、少しでも楽な形で仕事ができるように工夫して下さい。
福島照美福島さん:
 彼女のことは入社当時から知っていますが、本当に頑張り屋さんなんです。ですから今回は少し息抜きをさせてあげることが必要なんだろうと思います。職場の同僚や上司が自然に見守ってあげることがこの時期は大事だということですね。
大熊社労士:
 その通りです。周囲の同僚や上司が状態をよく観察することが必要です。そして、軽作業でさえも無理しているなぁと感じられたら、はやりすぐに休ませるなどの対応が必要でしょう。
宮田部長宮田部長:
 わかりました。働かせるかどうかについては、状態を正確に把握した上で、本人とよく話しあい、専門医の診断や意見を参考にして、わが社の産業医とも相談し決めることにします。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回も前回に引き続き、うつ病の症状を示している社員への対応方法について取り上げてみました。通常の仕事ができないことは、本人にとっては辛いことだと思いますが、まずはうつ病を治すことを優先して考えることが大事です。うつ病を治療しながら、通常の仕事や残業などをすることは、治りを遅らせたり、より症状を重くさせることに繋がり兼ねません。軽作業に就かせるにしても、休ませるにしても、本人によく説明し、理解させた上で、会社や上司の権限・裁量で指示をすることが必要でしょう。また周囲の同僚にも対応についての会社の考え方を十分に説明し、組織として支援をする体制を整えることも重要です。それだけに会社としてもメンタルヘルスの問題について正しく理解をし、適切に対応できるようにしておく必要があります。メンタルヘルスのセミナーなどは最近たくさん開催されるようになってきましたので、ぜひ参加してみてください。



関連blog記事
2008年1月7日「うつ病の症状が見られる社員が発生したときの対応は、どうしたらよいですか?」
https://roumu.com/archives/64787155.html
2007年12月18日「深刻化するメンタルヘルス問題:心の不調に気づくポイント」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51196396.html
2007年12月18日「深刻化するメンタルヘルス問題:心の不調に気づくポイント」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51196396.html
2007年11月27日「公的機関等が提供するメンタルヘルス相談機関」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51175715.html
2007年11月23日「激増するメンタルヘルスに関する労働相談」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51169065.html
2007年10月19日「具体的対応が遅れるメンタルヘルス対策」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51131807.html
2007年6月15日「うつ病等のメンタルヘルス不全者への医療費助成」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50994157.html
2007年4月13日「深刻化する企業のメンタルヘルス問題」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50942271.html
2006年7月28日「年々深刻化する企業のメンタルヘルス問題」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50664577.html


参考リンク
独立行政法人 労働者健康福祉機構「産業保健推進センターのご紹介」
http://www.rofuku.go.jp/sanpo/
愛知労働局「職場におけるメンタルヘルスの相談機関について」
http://www2.aichi-rodo.go.jp/topics/docs/04-06-22-1.html
大阪労働局「メンタルヘルスについて 」
http://osaka-rodo.go.jp/joken/anzen/kenko/mental.php
福岡労働局「メンタルヘルス」
http://www.fukuoka.plb.go.jp/7eisei/eisei08.html
独立行政法人 労働者健康福祉機構「勤労者心の電話相談(無料)」
http://www.rofuku.go.jp/rosaibyoin/kokoro_soudan.html


(鷹取敏昭)


当社ホームページ「労務ドットコム」および「労務ドットコムの名南経営による人事労務管理最新情報」「Wordで使える!就業規則・労務管理書式Blog」にもアクセスをお待ちしています。