うつ病の症状が見られる社員が発生したときの対応は、どうしたらよいですか?

 みなさん、あけましておめでとうございます。大熊です。今日でこの大熊ブログも2年目に入ります。今後も毎週月曜日に更新していきますので、よろしくご愛顧下さい。さて、新年を迎え、服部印刷ではこれから年度末に向けた本格的な繁忙期に入ろとしているのですが、新年早々、服部社長から「うつ病の症状が見られる社員がいるのだが、どうしたら良いだろうか」という相談の電話を受け、訪問することになりました。メンタルヘルスの問題は企業の人事労務管理において、過重労働対策や安定的な人材確保と共に、最重要の課題の一つになっているという印象が強いですね。おっと、そろそろ時間です。訪問することとしましょう。



大熊社労士:
 あけましておめでとうございます。服部社長、今年もよろしくお願いします。
服部社長服部社長:
 やあやあ、大熊さん、あけましておめでとうございます。年始早々で申し訳ありませんが、相談に乗ってください。実は、うつ病のような症状が見られる女性社員がいるのです。わが社でそのような社員は出ないだろうと思っておりましたので、どうしたらよいか分からず困っているのです。
大熊社労士:
 そうですか。それでその女性社員は、いまどのような状態ですか?
服部社長:
 はい、始業前に余裕をもって出社するような社員だったのですが、12月中頃から出勤するのも大変そうで、ここ最近は始業時刻ギリギリに到着しています。それもかなりしんどいようで、通勤時間としては普通であれば30分程度なのですが、途中で休憩をとっているらしくほぼ2倍の時間がかかっているようです。
大熊社労士:
 それは本人にとっても辛いでしょうね。それ以外に、仕事上ではどうですか?
宮田部長宮田部長:
 いまのところ大きなミスは発生していませんが、ケアレスミスが増えてきていると聞いています。また、ぼーっとしている時間も目立ってきており、周囲の社員からもなにか様子が変だと話題になっているようです。どうしたらよいでしょうか?
大熊社労士:
 えぇ、こうしたメンタルヘルスの問題は非常にデリケートな内容ですので、慎重に対応することが必要です。そこで、まずは本人の気持ちを受け止めながら、状態をしっかり把握してください。そのとき、コミュニケーションの取り方に注意が必要です。仕事でミスが出始めていることや、ぼーっとしていることを責めるのではなく、本人の抱える辛い気持ちを一緒になって受け止め、共に感じるように対応することが大切なのです。
福島照美福島さん:
 年齢が近いものですから私も気になっていて話を聞こうと声をかけてみたのですが、「心配いらない。頑張ります」といって十分な話はできていません。本来、根が真面目な女性のため、頑張り過ぎないか心配です。ここはやはり上司から切り出して、話をしてもらった方がよいと思っていますが、どうでしょうか?
大熊社労士:
 はい、そのとおりです。愚痴っぽい話を聞く程度であれば職場の同僚でもよいと思いますが、身体に症状が出ていることを考えれば、上司がきちんと対応すべきでしょう。その際、話をする場所ですが、他の社員がいるところでは、本人は周囲の目を気にしてわざと元気な姿を見せようとしたり、本当の状態を隠したりすることがあります。また、今回のような件は非常にプライベートな内容になりますから、プライバシーが確保できる個室で行うようにしてください。
宮田部長:
 本人との面談では、どのようなことを聞けばよいのでしょうか?
大熊社労士:
 その女性社員が、すでに医師の診察を受けているのであれば、どのような治療や投薬を受け、主治医から療養上の指導や仕事を続けることについてはどのように聞いているのかを確認します。治療を受けていない場合は、現在の気持ちを聞き取った上で、専門の医師の診療を受けるように勧めたり、会社の産業医に相談するなどして、本人と共に治療の方法や仕事の仕方を考えていくようにしてください。
服部社長:
 症状によっては、しばらく休ませることも考えなければなりませんよね。
大熊社労士:
 はい、治療に専念するために休ませる場合や勤務時間を短縮する場合は、本人にそのことを理解させると同時に、職場全体でその女性社員の状態を理解させ、フォローしてあげられるような態勢を整えることが必要です。これは上司が主導で行ってください。
宮田部長:
 職場の同僚たちは思いやりがある者ばかりなので、フォロー対応を現場の社員に任せたいのですが、いけませんか?
大熊社労士大熊社労士:
 それは避けた方が良いですね。まずは、上司が入って検討するようにしてください。例え一時的であったとしても、職場の社員への説明もなく、詳しい状況がわからないまま話を進めたとすれば、事実とは異なる内容で噂が広がる可能性があります。そうなると職場がギクシャクしてしまい、フォローどころではなくなってしまいます。
福島さん:
 そうなれば、うつ症状で休んでいる社員が引け目を感じてしまい、職場に復帰することができなくなってしまうのではないでしょうか。
大熊社労士:
 そうですね。そうさせないようにする工夫とその女性社員を受け入れる雰囲気づくりをするためにも上司のコントロールが必要でしょう。
宮田部長:
 わかりました。まずは上司が面談し、本人から状態を聞くとともに、医師と相談の上、必要に応じて休ませるなどの対応をとる。そして、上司が主導で職場でのフォロー態勢を作ることにします。
服部社長:
 忙しい時期を迎えるが、宮田部長も上司や職場をバックアップするように頼むよ。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は、うつ病の症状を示している社員への初期対応の方法について取り上げてみました。うつ病は今や大きな社会的問題になってきており、どんな小さな会社であっても「うつ病には関係ない」ということは言えなくなってきています。したがって、会社はうつ病を理解し、適切な対応をしなければなりません。また予防も考えていくべきでしょう。うつ病の症状を示している社員へ、会社がとるべき対応としては、症状や状態を正しく把握する、うつ病になった原因やその背景を確認する、医師の診断や治療方針のもとに対応を図る、仕事が耐えられるのか、耐えられなければ勤務時間を短縮したり、休職を命ずる段取りをとる、不在となる業務を職場でフォローする態勢を作る、などがあげられます。これらは上司一人で行うのではなく人事の責任者とともに対応することが必要です。それでは次回以降もしばらくこのメンタルヘルスに関する内容を取り上げて行きたいと思います。



関連blog記事
2007年12月18日「深刻化するメンタルヘルス問題:心の不調に気づくポイント」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51196396.html
2007年11月27日「公的機関等が提供するメンタルヘルス相談機関」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51175715.html
2007年11月23日「激増するメンタルヘルスに関する労働相談」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51169065.html
2007年10月19日「具体的対応が遅れるメンタルヘルス対策」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51131807.html
2007年6月15日「うつ病等のメンタルヘルス不全者への医療費助成」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50994157.html
2007年4月13日「深刻化する企業のメンタルヘルス問題」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50942271.html
2006年7月28日「年々深刻化する企業のメンタルヘルス問題」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50664577.html


参考リンク
独立行政法人 労働者健康福祉機構「産業保健推進センターのご紹介」
http://www.rofuku.go.jp/sanpo/
愛知労働局「職場におけるメンタルヘルスの相談機関について」
http://www2.aichi-rodo.go.jp/topics/docs/04-06-22-1.html
大阪労働局「メンタルヘルスについて 」
http://osaka-rodo.go.jp/joken/anzen/kenko/mental.php
福岡労働局「メンタルヘルス」
http://www.fukuoka.plb.go.jp/7eisei/eisei08.html
独立行政法人 労働者健康福祉機構「勤労者心の電話相談(無料)」
http://www.rofuku.go.jp/rosaibyoin/kokoro_soudan.html


(鷹取敏昭)


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