パワハラが発生した際にはどのように対処すればよいですか?

 服部印刷では、引き続きパワハラに関するレクチャーを大熊社労士から受けている。



宮田部長宮田部長:
 先日相談させてもらった社員の無断欠勤はパワハラが原因ではなかったのですが、もし、本当にパワハラを受けたという相談者が出てきたときにはどのように対処したらよいでしょう?
大熊社労士:
 まず行わなければならないことは、事実を速やかに、かつ正確に確認することです。必ずパワハラを受けた相談者と、パワハラを行ったとされる行為者の双方から事情を聴いてください。また、周囲の社員や関係者からもパワハラが起こったときの状況が確認できそうであれば聴くようにしてください。
服部社長:
 そのときは誰が事情を聴くのがよいのでしょうか?
大熊社労士大熊社労士:
 相談者や行為者の直接の上司がその事情を聴こうとすると、無意識のうちに、どちらかへ偏った聴き方をしてしまいがちです。一方を擁護する立場に立ってしまうと、正確なことが確認できなくなり、また当事者の感情的な問題にも繋がりやすいものです。ですから人事部や総務部の担当者など、できるだけ中立的な立場から事情を聴く方がよいでしょう。それも1人ではなく、できれば2人程度で聴くのがよいと思います。
服部社長:
 それではわが社では、私と宮田部長で事情を聴き、状況を確認するようにしたいと思います。ところで、パワハラ行為が実際にあったと分かったときには、どうすればよいでしょう?
大熊社労士:
 まずパワハラを行った行為者に対して、厳重注意や懲戒などの必要な処分を行う必要があります。そして、行為者から被害者への謝罪と共に、行為者と被害者との関係改善のための措置が必要です。
宮田部長:
 行為者と被害者との関係改善のための措置とは、具体的にはなにを行うのでしょうか?
大熊社労士:
 可能であれば行為者と被害者を、仕事上でできるだけ接触しないような配置転換を行うことが望まれます。しかし、大きな企業ならまだしも、中小企業では配置転換が難しいことが多いので、その場合は行為者と被害者との間に別の社員を関与させて、適切な関係を確保するとよいでしょう。
服部社長服部社長:
 パワハラが実際に起こったそのときには、改めて対処方法について大熊さんに相談させていただきますが、いまの当社においてはそれよりもパワハラを防止することが大切だと思います。そのためには、どうしたらよいでしょう?
大熊社労士:
 はい、パワハラ防止のためには、まず企業自身が「パワハラは許さない」という態度を全社員に向かって表明することです。宣言文を掲示したり、朝礼等で社長から話をしてもらうなど啓発してください。その上で、行為者に対する処分を明確にし、就業規則等に規定化することも必要です。また、相談窓口の整備を行います。社内での相談窓口の設置ほか、社外の相談機関も必要に応じて利用されるとよいでしょう。そして、社内研修をぜひ実施してください。社内研修では、パワハラとは何か、パワハラ防止になぜ取り組むのか、パワハラを防止するための基本などを学んでもらいますが、これらはわかっていそうで実はあまり理解できていません。上司と部下との認識の違いなどを学ばせることは、パワハラ防止にとって非常に効果的です。
服部社長:
 よくわかりました。時機をみて役職者を中心にパワハラ研修を企画したいと思います。そのときは大熊さん、講師をお願いします。今日はありがとうございました。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。前回に引き続き、パワー・ハラスメント(パワハラ)について取り上げてみました。社外の相談機関としては、弁護士事務所や私たちのような社会保険労務士事務所、その他ハラスメント相談を専門に取り扱っているコンサルタント会社などがあります。社内窓口だけでは、社員にとっては言い出しにくい場合があります。そのため社内で相談できず、何も解決しないまま退職してしまうことになると、職場環境は何ら改善されませんので、新たな被害が生じる可能性があります。相談できる窓口の設置は非常に重要ですので、社内・社外どのような相談体制で臨むのかご検討ください。



関連blog記事
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2008年8月11日「パワハラと注意指導との境目はどこですか?」
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2008年8月4日「同僚の前でひどく怒鳴ってしまった、これはパワハラになるのでしょうか?」
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2007年12月19日「多くの職場で見られる「いじめ」の実態」
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2007年10月14日「組織を悩ますコミュニケーション下手の増加」
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2007年05月04日「7割以上の社員が管理職へのパワハラ研修の実施を要望」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50959952.html
2005年05月21日「労働相談内容に関する東京都産業労働局の調査結果とパワハラの増加」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/22468148.html


参考リンク
社団法人産業カウンセラー協会「産業カウンセラー440 人が見る職場/悲惨さ増す「職場のいじめ」の実態」
http://www.counselor.or.jp/pdfs/071212.pdf


(鷹取敏昭)


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