パワハラ対策として求められる具体的取り組みについて教えてください
前回はパワーハラスメント(以下「パワハラ」という)の定義等について説明を受けた宮田部長。今回はそれに引き続き、パワハラ対策として求められる具体的取り組みについて話を聞くこととした。
※前回の内容「パワハラの定義が取りまとめられたそうですね。どのような影響が予想されますか?」は以下をご覧ください。
https://roumu.com/archives/65553318.html
大熊社労士:
今回、パワハラの定義や行為類型が取りまとめられたことによって、従来以上にパワハラとして申告される案件が増加するのではないかと懸念しています。それだけに今後は無用なトラブルを防止する意味から、具体的なハラスメント対策を進めていく必要があります。そこで本日は企業に求められる対策についてお話ししたいと思います。
宮田部長:
よろしくお願いします。
大熊社労士:
今回、2012年3月15日に厚生労働省の職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議において「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」が取りまとめられた訳ですが、その中で述べられている対策は訓示的な内容が多いので、この提言の前提となっている報告で取り上げられている取り組み例についてお話ししたいと思います。まず、職場のパワハラを予防するための取り組みとしては以下のような事項が挙げられています。
トップのメッセージ
・組織のトップが、職場のパワーハラスメントは職場からなくすべきであることを明確に示す
ルールを決める
・就業規則に関係規定を設ける、労使協定を締結する
・予防・解決についての方針やガイドラインを作成する
実態を把握する
・従業員アンケートを実施する
教育する
・研修を実施する
周知する
・組織の方針や取組について周知・啓発を実施する
服部社長:
なるほど。やはりトップとしてパワハラをしてはならないという方針を明確に示すことが重要ですね。
大熊社労士:
そうですね。なんでもそうだとは思いますが、やはりまずはトップの考えが社内に明確に発信されることが重要ですね。そしてそれを受けて、就業規則やハラスメント防止規程といった諸ルールを制定することが求められます。
宮田部長:
その上で研修の実施ですかね?
大熊社労士:
そうですね。ハラスメントは許さないという方針を徹底すると共に、パワハラの定義や行為類型などを具体的な例を持って理解させることが重要ですね。また就業規則の内容も説明し、場合によっては懲戒処分の対象となることや社内の相談窓口の利用方法などについても伝える必要があろうかと思います。
服部社長:
分かりました。宮田部長、次回の全社会議の際にも私からのメッセージを社員に発信しようと思います。それを受けて、就業規則の整備や研修の開催などを検討してください。大熊さん、是非支援してやってください。
大熊社労士:
了解しました。それでは次に、実際にパワハラが発生した場合の対応についてですが、以下のような対応が求められます。
相談や解決の場を設置する
・企業内・外に相談窓口を設置する、職場の対応責任者を決める
・外部専門家と連携する
再発を防止する
・行為者に対する再発防止研修を行う
宮田部長:
相談窓口としてはセクハラの相談窓口を私と福島さんで運営していますが、その対象にパワハラを追加すればよろしいでしょうか?
大熊社労士:
そうですね。それでよろしいかと思います。報告書で取り上げられているパワハラ対策の取り組み例としては以上ですが、以前から私が感じていることがあります。というのは、パワハラは部下指導に熱心な上司が知らず知らずのうちに行き過ぎてしまうという例が多いように思うのです。それだけに本人には悪気はまったくなく、むしろ良かれと思って、適正な範囲を超えた指導を行っていることが少なくありません。
服部社長:
確かにそれはあるかも知れませんね。実は恥ずかしながら、私も以前、社員にパワハラだと陰で言われたことがありました。その際も私はその社員のことを何とかしてやりたいと思いから、少しきつい言い方をしていました。あとから考えればやりすぎた部分もあったかも知れないと思いますが、当時は彼を成長させたいという想いだけでしたから。
大熊社労士:
そうですね。それだけに本人は気付くことができないという前提で、周囲がフォローしてやることが重要だと思うのです。具体的には管理職同士で注意し合うような関係を作ることが重要ですね。
宮田部長:
確かにそうですね。社員向けの研修会ではそうしたことも伝えることが必要ですね。
大熊社労士:
そうですね。また今回はいわゆる職場のいじめについても対策を取る必要がありますので、周囲でハラスメント行為が見られた場合には相談窓口に連絡してもらい、問題が小さなうちに解決するという会社の姿勢も示
しておきたいところでしょう。
宮田部長:
なるほど、分かりました。それでは当社でも今回教えて頂いたような対策を取っていきたいと思いますので、就業規則整備や研修会の開催の際にはまた相談に乗ってください。
大熊社労士:
承知しました。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今回はパワハラ対策の具体的内容について取り上げました。近年、職場のいじめも含めたハラスメントの問題が急増していますが、今後はメンタルヘルス不全の問題とも連動し、更に大きな人事労務管理上の問題として認識されることとなるでしょう。今回、厚生労働省よりこのような提言および報告がなされたことは実務に一定の影響が出てくると考えられますので、実際の内容をご確認いただき、必要な対策を取っておくことが求められます。
関連blog記事
2012年4月9日「パワハラの定義が取りまとめられたそうですね。どのような影響が予想されますか?」
https://roumu.com/archives/65553318.html
2012年3月16日「厚労省円卓会議による「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」のポイント」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51917920.html
2008年8月25「パワハラが発生した際にはどのように対処すればよいですか?」
https://roumu.com/archives/64961516.html
2008年8月18日「パワハラがもたらす損失にはどのようなものがありますか?」
https://roumu.com/archives/64961481.html
2008年8月11日「パワハラと注意指導との境目はどこですか?」
https://roumu.com/archives/64948560.html
2008年8月4日「同僚の前でひどく怒鳴ってしまった、これはパワハラになるのでしょうか?」
https://roumu.com/archives/64948552.html
参考リンク
厚生労働省「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言取りまとめ」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000025370.html
厚生労働省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000021i2v.html
(大津章敬)
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