失業手当と年金の調整とはどのようなものですか?(失業給付と年金の調整 その2)

 事務所で年金と失業手当の調整について復習していた大熊は、宮田部長が理解してくれるか少し心配な面持ちで服部印刷に向かった。到着すると、張り切った顔の宮田部長が待ち受けており少しほっとしながら話を切り出した。
※今回の記事は先週からの続きとなっていますので、まずは以下の記事をご覧ください。
関連blog記事:2013年10月14日「失業手当をもらうと年金がもらえなくなるのですか?(失業給付と年金の調整 その1)」
https://roumu.com/archives/65631569.html


大熊社労士:
 こんにちは。今日は失業手当(失業給付)と年金の調整のお話しの続きでしたよね。
宮田部長:
 はい、よろしくお願いします。
大熊社労士大熊社労士:
 前回、お話しした通り、年金(※)を受け取ることができる際に求職の申込みをすると、年金を受けられなくなります。これは失業手当を受け取れることができない給付制限期間についても同様なのですが、この期間に受け取れるはずだった年金は、後々調整されて支給されることになっています。
※特別支給の老齢厚生年金を含めた65歳になるまでの老齢厚生年金を指します。
宮田部長:
 それは給付制限期間は失業手当も年金も両方受け取れないからということですか?
大熊社労士:
 はい、その通りです。具体的には「事後精算」ということで、求職の申込み以降に失業手当をもらわなかった期間と年金を受け取らなかった期間を精算する仕組みになっています。
宮田部長:
 でも、なんでそんなややこしいことをするんですか?単純に失業手当が受け取れない日は年金が受け取れるってことにすればいいじゃないですか?
大熊社労士:
 とても良い質問ですね!本当はそれが一番すっきりするのかもしれませんが、失業手当は日単位、年金は月単位で支給されることになっているので、事後精算の仕組みが必要になってくるのです。少し考えてみてください。失業手当が受け取れるかは1日単位で決まりますよね?今日、1日アルバイトをして一定額以上の賃金を受け取ると失業手当は、今日については受け取れないですよね。
宮田部長宮田部長:
 失業認定の日に「この日、アルバイトをした」と申告するやつですね。確かに申告は28日に1回ですが、1日単位でこの日は働いた・働いていないと答えますね。
大熊社労士:
 一方の年金については月単位の支給となっており、何日分を支給するといった日割り計算のような概念はないんです。だから、失業手当をもらった日が1日でもある月は、年金は全額受け取れません。そのため、失業手当を受け取った日数の合計が一緒であっても、例えば、月をまたいで失業手当が支給されたかどうかで、年金を受け取れない月数が変わってきてしまうのです。
宮田部長:
 なるほど!例えば、90日失業手当を受け取ることができる人で考えると、以下のような二つのパターンができるということですね。
【Aパターン】
 4月1日から6月29日まで受け取る→4月・5月・6月の3ヶ月間の年金が支給停止
【Bパターン】
 4月21日から7月18日まで受け取る→4月・5月・6月・7月と4ヶ月間の年金が支給停止
大熊社労士:
 具体的事例まで出していただき、ありがとうございます。考え方はその通りです!
宮田部長:
 で、事後精算でどうやって調整するのですか?
大熊社労士:
 はい、以下の計算式となっています。

失業給付と年金の調整

 挙げていただいた事例でお話をすると、以下のようになり、支給停止が1ヶ月長かったBパターンは1ヶ月の事後精算が行われるということですね。
【Aパターン】
 3ヶ月-90日÷30日=0ヶ月
【Bパターン】
 4ヶ月-90日÷30日=1ヶ月
宮田部長:
 なるほど、こうやって調整されるのであれば、多少受け取る時期は遅くなりますが、平等に感じますね。
大熊社労士:
 そうですね。ただ、年金を受け取るのか失業手当を受け取るのかは、個人の各々の額、そして、税金の取扱いによっても異なるので一概に言えないというのが現状です。個別に額を比較しながら、判断していくことになるのでしょうね。
宮田部長:
 確かにそうですね。自分がもらうときには大熊先生に具体的に相談することにします。
大熊社労士:
 あはは、そうですね。今後ともよろしくお願いします。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。2回にわたり、老齢厚生年金と失業手当の調整について取りあげてきましたが、いかがでしたか?最後にお話しした税金の取扱いですが、失業
手当は非課税、老齢厚生年金は雑所得になるようです。家族の扶養親族になる・ならないといった面にも影響してくるので、額の大きさの比較のみではなく、その他への影響も考えるようにしましょう。もちろん、失業手当をもらう前提は働く意思と能力が必要なことは大前提にあることを、再度、ここでお伝えしておきます。


関連blog記事
2013年10月14日「失業手当をもらうと年金がもらえなくなるのですか?(失業給付と年金の調整 その1)」
https://roumu.com/archives/65631569.html
2012年12月24日「高年齢雇用継続給付をもらうと年金が減るんですか?」
https://roumu.com/archives/65591764.html

(宮武貴美)
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