月60時間超の残業に対する50%割増の中小企業猶予措置終了に関する議論が始まりました
今日は久々に服部社長が在社されているとのことで、今後の労働時間等に関する話をしようと思い、出掛ける大熊であった。
服部社長:
大熊さん、ご無沙汰しています。そういえば今国会では、人事労務に関連する法律改正がずいぶんたくさん出ているのですよね?
大熊社労士:
ええ、そうなんです。こちらのブログにあるとおり、労働者派遣法や労働安全衛生法の改正法案が出されていますよ。
服部社長:
なるほど、きちんと動向を確認しておく必要がありますね。
大熊社労士:
そうそう、それから以前、服部社長が気にされていた残業の割増率引き上げに関することも議論が始まりました。
服部社長:
そうですか。どのような見通しになるか教えていただけませんか?
大熊社労士:
はい、まだ見通しとなると議論が始まったばかりで詳細はまったく分かりません。現状は、労働時間法制について、労働者側・使用者側の双方から意見を聴き、それをまとめた段階です。当然ながら労働者側からは、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の中小企業の猶予措置について速やかに廃止すべきとしていますし、使用者側からは、中小企業の「猶予」ではなく、「適用除外」とすべきであると主張しています。
服部社長:
まぁ、賃金もたくさん払いたい、休暇もできる限り取って欲しいとは思うものの、現実はなかなかそうはいかないといったところですからね。
大熊社労士:
そうですね。ここでの議論ですが、先ほども申し上げたように労働時間法制全般について様々取り上げられています。例えば、年次有給休暇についてなどもあります。
宮田部長:
年休について?日数が増えるとかいうことですか?
大熊社労士:
いいえ、付与日数についてはあまり議論になっておらず、どちらかというと取得促進という観点ですね。現在の日本の年休取得率は5割未満で、決して高いとはいえません。ワーク・ライフ・バランスが重視されている世の中ですので、この取得率を上げるような取り組みを求めるというのが労働者側の主張ですね。また、年休の取得抑制に繋がらないことを前提に、退職時の未消化の年次有給休暇の清算(買上げ)についても議論すべきだという主張もしています。
宮田部長:
そんな主張もあるのですね。
服部社長:
それはキツイものですよね。仮に未使用の年休が40日あるので、全部買い取ってくれと主張されてしまうと、負担は相当大きいものですから。それであれば、家族サービスのためにも計画的に消化していってもらいたいところですよね。
大熊社労士:
そうですね。使用者側の意見としても、取得促進が重要であるとしていますから、以前のように「年休を取るとは何事だ」というような考えの経営者は徐々に少なくなってきているのでしょう。
服部社長:
確かに、私の周りでもその意識は変わりつつあるように思いますね。一方で、ホワイトカラーの生産性はどうなのかといったことが話題に上ります。
大熊社労士:
やはりそうですか。弾力的な労働時間制度についても議論のひとつになっています。一部の事務職や研究職等の適した労働時間制度はどのようなものなのかといったことですね。専門性が高い業務に就く人は、その人独自の業務に対するこだわりもあり、自分が満足するまで業務に取り組みたいということも耳にしたりしますよね。
服部社長:
そういう人にはどのように対応すればよいか、悩ましく思います。好きな業務に没頭させてあげたいと思いつつ、長時間労働になるのは防ぐ必要があるということですからね。
大熊社労士:
そうですね。残業の割増率引き上げのみではなく、全体的に注目していく必要がありますね。ちなみに、昨年9月27日に開催された第103回労働政策審議会労働条件分科会の中で、「閣議決定上、総合的な労働時間の議論に関しまして、1年を目途に結論を得るということにされているところです」との発言がありました。ですので、今年の秋ごろにはさまざまな取扱いの方向性が見えるかもしれませんね。
服部社長:
そうですか。また、随時、情報をいただければと思います。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今後、労働時間については大きな議論になることでしょう。事業場外みなし労働についても阪急トラベルサポート事件の最高裁判例の関係で注目が集まっています。木曜日に開催する以下のセミナーでも取り上げることになっていますので、よろしければお越しください。
http://www.meinan.net/seminar/10931/
関連blog記事
2014年3月20日「派遣法、安衛法など通常国会で審議される改正法案の一枚もの概要資料」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52030036.html
2013年12月2日「中小企業の1ヶ月60時間超の残業に対する割増率引き上げの見込みはどうですか?」
https://roumu.com/archives/65637514.html
参考リンク
厚生労働省「第109回労働政策審議会労働条件分科会資料」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000038191.html
(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/
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