社会保険未加入の事業所にアンケートが送られているのですか?
大熊が服部印刷に到着すると、予定通り、服部社長、宮田部長、福島さんの3名がそろって待っていてくれた。
前回のブログ記事はこちら
2015年11月23日「社会保険加入に関する情報が他省庁間でやり取りされています」
https://roumu.com/archives/65725320.html
服部社長:
大熊さん、先日はありがとうございました。例の建設業の社会保険の件を知り合いに伝えたところ、とても感謝されました。あの後、すぐに電話したのですけどね、国交省に電話するにも敷居が高く、といっても放置もできないということで、悩まれていたようです。
大熊社労士:
それはよかったです。こういう面で会社のお役に立ち、価値を感じていただけると社労士の一人としてうれしく感じます。さて、今日は国税庁と日本年金機構の連携の話でしたよね。
宮田部長:
そうそう、私もあの後、他社との人事部長交流会で社会保険の加入に関する話題で盛り上がりましたよ。
大熊社労士:
いろいろ情報交換されているのですね。さて、この国税庁と日本年金機構の連携ですが、日本年金機構が国税庁から、所得税の源泉徴収義務者である法人事業所の情報に関し、提供を受けています。
宮田部長:
でも、所得税と社会保険なんて関係ないじゃないですか。
福島さん:
でも・・・大熊先生、「法人事業所」っておっしゃいましたよね?
大熊社労士:
そうなんです。鋭いですね。「法人」というのがミソなのです。そもそも法人は、雇用する従業員の人数に関わらず、もちろん従業員がゼロ(事業主のみ)であっても強制適用事業所として社会保険に加入しなければなりません。そのため、所得税の源泉徴収義務者である法人事業所であれば、社会保険に加入しなければならないことになるのです。
宮田部長:
なるほど。
服部社長:
源泉所得税を納付していない事業所よりも、社会保険に加入していない事業所の方が多いのでしょうから、日本年金機構が国税庁から情報をもらうということになるのでしょうね。
大熊社労士:
そうですね。そして、日本年金機構は受け取った情報を元に、社会保険の加入手続きを行っていない事業所に文書送付等を行ってきました。これはまず、厚生年金保険の適用と、国税庁の新設法人の登記簿情報等を突合せて未加入となっている法人を洗い出したそうです。まずは、新しく設立した法人から対応していこうということなのでしょうね。
服部社長:
新規設立の場合、社会保険の負担は重いから当面は未加入で・・・という違法状態を理解しながらいる事業主と、逆に社会保険に加入しなければならないことを理解していない事業主がいるでしょうから、適切な指導が欠かせないのではないかと思っています。
大熊社労士:
そうですね。
宮田部長:
この前の人事部長会で出た話ですと、加入状況のアンケートのようなものがずっと前からある関連会社に送られてきたという人がいましたね。
大熊社労士:
なるほど、このようなものですね。それはおそらく新規ではないものの、今回の連携で新たに判明した社会保険未加入の事業所なのではないかと思います。関連会社ということですので、実際は従業員を雇用しての活動実績があまりないような会社なのではないでしょうか。
宮田部長:
えぇ、なんだか、不動産収入があって、それに対し、役員報酬を払っているだとかいう話でした。役員は他の会社で社会保険に加入しており、従業員はいないので、社会保険に加入する必要がない、なんて話でしたよ。
福島さん:
ふふふ、詳しくお話を聞いていらっしゃいますね。
宮田部長:
そうなんだよ、不動産収入、いいなぁ、なんて思っちゃって(笑)
大熊社労士:
確かにうらやましいです(笑)
福島さん:
大熊先生まで!
大熊社労士:
あはは。まぁ、それはいいとして、そのような会社でも、当然、社会保険には加入しなければならないのですよね。実際は、他の会社で高額の役員報酬を受けていて、健康保険・厚生年金保険ともに標準報酬月額の最高等級のため、2ヶ所で加入しても変わらないという話も耳にするのですけどね。
服部社長:
まぁ、確かにそう思う気持ちも分からないでもないですね(笑)
宮田部長:
大熊先生、そのアンケートを返送するとどうなるのですか?
大熊社労士:
えぇ、まぁ、す
ぐに社会保険を適用しなさいということはないようですが、アンケートの結果で優先順位をつけて、社会保険の加入勧奨を行うようです。ですので、すぐに加入しなさいということはないのですが、いずれ年金事務所への呼び出し等で加入の勧奨が行われるのでしょう。
服部社長:
いまのうちに、きちんと対応法を決めておく必要があるということですね。
大熊社労士:
そうですね。
宮田部長:
また、次回の人事部長会で情報提供をしておきますね。ありがとうございました。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。社会保険に加入すると、保険料の負担はもちろんのこと、その事務手続きも負担になります。社会保険の加入手続きを進める上では、誰が社会保険の事務担当になるかも想定しておくことが必要になります。
関連blog記事
2015年11月23日「社会保険加入に関する情報が他省庁間でやり取りされています」
https://roumu.com/archives/65725320.html
参考リンク
日本年金機構「Q. 法人の事業所は、すべて厚生年金保険の適用事業所となるはずですが、私の周囲に未加入の事業所を見かけます。加入する義務があるのではないですか。」
https://www.nenkin.go.jp/faq/kounen/kounenseido/jigyonushi/20140902-02.html
(宮武貴美)
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