社会保険加入に関する情報が他省庁間でやり取りされています

 大熊が服部印刷に到着すると、その姿を見かけた福島さんが服部社長を呼びに行ってくれた。


宮田部長宮田部長:
 大熊先生、いらっしゃいませ。いま、福島さんが社長を呼びに行ったので、少々お待ちください。
大熊社労士:
 はい、かしこまりました。今日は社長からお尋ねごとですかね?
宮田部長:
 何か直接確認したいから・・・と話していましたね。
福島照美福島さん:
 社長ですが、電話中でした。何か社会保険がどうのこうの、なんてお話でしたので、今日のお話のことかも知れません。
服部社長:
 ・・・あぁ、すみません、大熊さん、お待たせしました。大熊さんがいらっしゃる日だと聞いて、少しバタバタしてしまいました。
大熊社労士:
 社長がバタバタとは珍しいですね。何かあったのですか?
服部社長:
 いえね、たまたま知り合いの社長から先日、相談を受けたのですよ。「国土交通省から社会保険に加入していないので、加入手続きをするように」という指導書が来たとかいう話でして。
大熊社労士:
 なるほど、社会保険の最初の加入手続き(新規適用)のお話ですね。
服部社長服部社長:
 いえいえ、それが違うんです。その会社は、既に以前から社会保険に加入しているんです。それにも関わらず、社会保険に加入していないなんて指導書が届いたので、びっくりしていましたよ。その会社は社会保険労務士と顧問契約をしていないらしく、たまたま大熊さんがいらっしゃることが分かったので、そんなことがあるのか?ってことを確認しておくよ、と安請け合いしてしまったんです。
大熊社労士:
 なるほど、そうでしたか。きちんとと加入されているのであれば、心配ありませんよ。今回は国土交通省からの指導書ということでしたので、おそらく建設業の会社さんですね?
宮田部長:
 え!そんな風に業種がすぐに分かっちゃうんですか?
大熊社労士:
 まぁ、なんとなく(笑)。というのも、建設業の社会保険の未加入問題は以前から大きくなっていて、国交省で対策が進められてきました。そして、その対策は厚生労働省との連携も図られて進められています。
福島さん:
 そんな風に他省庁とも連携を取るんですね。
大熊社労士:
 さすが福島さん、良いところに目をつけましたね。そうなんです。従来は縦割り行政で動いてきたものが、だんだん情報を交換し、横の連携も取るようになっています。そして、国交省は厚労省から提供を受けた社会保険の未加入情報を元に、指導書という形で社会保険への加入を促す文書を出したのです。
服部社長:
 なるほど、と言いたいところですが、なぜ、知り合いの会社は加入しているにも関わらず、指導書が届いたのでしょうか?
大熊社労士:
 原因ははっきり聞いていませんが、かなり多くの件数の指導書が誤って送られたようです。実は、私の顧問先にも同じような状況で、指導書が届いたのです。そして、全国社会保険労務士会連合会のホームページを見たら、「国土交通省が発出した社会保険未加入事業者に対する指導書の加入事業所への誤送付に関する会長声明」が出されていました。
服部社長:
 なるほど、と今度は言えますね。まぁ、誤りがあ大熊社労士ったことは残念ですが、誤って発送された会社は何か対応を取らなければならないのですか?
大熊社労士:
 私が確認したところ、特段の対応は必要ないとのことでした。社労士会が声明を出していることからしても、役所の方で再確認してくれると思いますので、問題ないかとは思いますが、心配でしたら国交省なりに確認をされるとよいかと思います。
服部社長:
 了解しました。きっと、社長も安心するかと思います。ただ、大きな声で言うべきことではありませんが、実際に社会保険に加入しなければならない会社で、現実には加入していない会社というのも知っているのですよね。このように他省庁での連携が始まっているとなると、今後はいろいろ調査が入るかも知れませんね。
大熊社労士:
 まさに、おっしゃるとおりです。今回は国交省へ厚労省がデータの提供をしたようですが、逆に厚労省が受け取っているデータもあります。それが国税庁からのものです。
宮田部長:
 国税庁?
大熊社労士:
 えぇ。給与から控除されて納付される源泉徴収の納税情報ですね。これをもとに調査が行われています。今後、納税はしているけれども、加入すべき社会保険に入っていないという会社は要注意ですね。
服部社長:
 なるほど。うちは
加入しているので関係ありませんが、その話、また、次回に詳しく聞かせてもらえませんか?
大熊社労士:
 承知しました。では資料も準備してきますね。
服部社長:
 よろしくお願いいたします

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今回の建設業の社会保険に関しては、平成28年1月以降に建設業許可の更新期限を迎える社会保険未加入事業者約51,400社に対し、大臣名の指導書を一斉送付したところ、既に加入事業所となっている会社に対して誤って送付されたそうです。届いた会社は驚いたかと思いますが、落ち着いて対応を進めるようにしましょう。


参考リンク
全国社会保険労務士会連合会「国土交通省が発出した社会保険未加入事業者に対する指導書の加入事業所への誤送付に関する会長声明」
http://www.shakaihokenroumushi.jp/general-person/topics/2015/pdf/20151118.pdf

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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