高年齢雇用継続給付 令和7年度に給付率を半分にする方向性

 これまで何度も廃止の議論がされながらも、「実態として労使間で広く定着し、高年齢者の雇用促進に重要な役割を果たしている」して現在まで存続している高年齢雇用継続給付ですが、いよいよ見直しになる方向です。そこで本日は、2019年12月20日(金)午前に行われた「第137回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会」で示された「雇用保険部会報告(素案)」の内容を見ていきたいと思います。

 高年齢雇用給付に関しては、以下の方針が記載されています。


○現在、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号)により、60歳以上65歳未満の労働者に対する継続雇用制度が実施され、令和7(2025)年度には継続雇用対象労働者の限定に関する経過措置が終了し、60歳以上 65歳未満の全ての労働者は希望すれば継続雇用制度の対象者となる。60~64歳の就業率は68.8%(平成30年)、希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合は78.8%(令和元年)に達していること、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71 号)による労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律7第88号)、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号)及び労働契約法(平成19年法律第128 号)の改正により、今後、高年齢労働者も含め、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保が求められていくこと等を踏まえると、雇用継続給付としての高年齢雇用継続給付については、段階的に縮小することが適当である。
○その際には、当該給付が高年齢労働者の継続雇用時の処遇決定に影響を与えている実情にかんがみ、事業主を含めた周知を十分な時間的余裕をもって行うとともに、激変を避ける対応が必要である。具体的には、令和6年度までは現状を維持した上で、65 歳未満の継続雇用制度の経過措置が終了する令和7年度から新たに 60 歳となる高年齢労働者への同給付の給付率を半分程度に縮小することが適当である。また、高年齢雇用継続給付の見直しに当たり、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を推進する等の観点から、高年齢労働者の処遇の改善に向けて先行して取り組む事業主に対する支援策とともに、同給付金の給付率の縮小後の激変緩和措置についても併せて講じていくべきである。その上で、高年齢雇用継続給付の在り方については、これらの状況も見つつ、廃止も含め、更に検討を行うべきである。
○一方、職業安定分科会雇用対策基本問題部会において、65歳以上の高齢者の70歳までの就業機会の確保に関する議論が行われている。就業機会確保措置に取り組む事業主への支援、高齢者の再就職支援や地域での多様な就業機会の確保に関し、当該支援策を雇用保険二事業を中心に、効果的に行うことができるよう、雇用安定事業に位置づけるべきである。


 要はいわゆる同一労働同一賃金の対応の中で見直しが必要であり、激変緩和も考えれば、まずは令和7年度から給付率を半分程度に縮小し、その後、廃止を含めた検討を実施するという内容になっています。高齢者の雇用および賃金制度については、長澤運輸事件以降の均等均衡処遇確保の問題、在職老齢年金制度および高年齢雇用継続給付の見直し、70歳までの就業機会確保といった新たな課題により、大きく見直しが求められています。


参考リンク
厚生労働省「第137回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会資料」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000187096_00013.html

(大津章敬)