愛知県内50~99人規模企業の障害者雇用 雇用者の43.8%が精神障害者
障害者法定雇用率が継続的に引き上げられており、その充足のためにも精神障害者を雇用するケースが増加しています。そこで今回は愛知県が実際に精神障害者を雇用している県内企業に対して実施したアンケート調査の結果を取り上げたいと思います。この調査の対象は、障害者の雇用義務がある従業員数45.5人以上の県内企業のうち、2018年6月1日現在において精神障害者を雇用しているすべての企業1,456社となっており、回答数は684社(回答率47.0%)となっています。
この調査結果のポイントは以下のようになっています。
(1)雇用されている精神障害者の人数は1社あたり平均3.3人
(2)精神障害者の雇用管理に不安がある企業が約8割
(3)不安がある理由は、「安定して働いていけるか」、「症状が再発・悪化しないか」、「職場に馴染むことができているか」など
(4)職場定着に障害者就労支援機関を活用していない企業が約4割
(5)企業が求める職場定着に必要な支援は、「人的支援の充実」、「障害者に関する研修等の実施」、「他社事例の提供」など
以下では私がもっとも興味深いと感じた企業規模による障害者雇用状況について取り上げます。グラフをご覧いただきたいと思いますが、回答数が3社のみである従業員数49人以下の企業を除き、従業員数50人以上の企業の状況を見ると、企業規模が大きくなるにつれて身体障害者の雇用数が増え、精神障害者の雇用数は少なくなっていることが分かります。具体的には、従業員数50~99人規模企業における精神障害者の割合が43.8%であるのに対し、1,000人以上規模企業では17.2%に止まっています。愛知県の分析では、「身体障害者に関しては、職場環境の整備が必要となることが多いので、企業規模が大きいほど職場環境の整備という点に優位性があることが考えられる」としていますが、現実には中小企業では勤務条件の良い身体障害者の採用ができず、法定雇用率を充足するために精神障害者を雇用しているということも大きいのではないかと思われます。
いずれにしてもいまや身体障害者だけで障害者法定雇用率を充足することは難しく、特に従業員規模が小さな企業では知的障害者や精神障害者を雇用できる環境整備が重要となっていることは間違いありません。今後も法定雇用率の引き上げが続く見込みですので、受け入れ態勢の整備を行うようにしていきましょう。
参考リンク
愛知県「精神障害者雇用に関するアンケート調査結果について」
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/shugyo/k-2019-206.html
(大津章敬)