厚労省「新型コロナウイルスに関する事業者・職場のQ&A」を公開

 新型コロナウイルスの感染者が増える中、今後、仮に職場で感染者が発生した場合にはどのように対応すべきかを考えている担当者も多いことでしょう。

 2020年1月28日の記事「厚生労働省新型コロナウイルスに係る電話相談窓口を設置」でご紹介したように、厚生労働省では電話相談窓口が設置されたほか、感染症情報として様々な情報を公開しています。

 この中には、「新型コロナウイルスに関する事業者・職場のQ&A」もあり、2020年2月1日版として公開されています。そこには以下のようなQ&Aが掲載されています。特に、感染者が出て休むこととなった際の取扱いについて、疑問を感じるかと思いますので、今からQ&Aを確認しておきましょう。


<安全衛生に関する問い合わせ>
問1 職場で取り組むべき新型コロナウイルス対策にはどのようなことがありますか。

 予防法としては、一般的な衛生対策として、咳エチケット※や手洗いなどを行っていただくようお願いします。
※ 咳エチケットとは、感染症を他人に感染させないために、個人が咳・くしゃみをする際に、マスクやティッシュ・ハンカチ、袖を使って、口や鼻をおさえることです。
特に電車や職場、学校など人が集まるところで実践することが重要です。

問2 労働者が武漢市に滞在していましたが、どのような対応をしたらよいのでしょうか。

 入国してから2週間の間に、発熱や呼吸器症状がある場合には、マスクを着用するなどの咳エチケットを実施の上、速やかにお住まいの地域の保健所に連絡し、医療機関を受診するようにしてください。その際、武漢市に滞在していたことを申告するようにしてください。

問3 労働安全衛生法第68条に基づく病者の就業禁止の措置を講ずる必要はありますか。

 2月1日付けで、新型コロナウイルス感染症が指定感染症として定められたことにより、労働者が新型コロナウイルスに感染していることが確認された場合は、感染症法に基づき、都道府県知事が就業制限や入院の勧告等を行うことができることとなりますので、それに従っていただく必要があります。
労働安全衛生法第68条に基づく病者の就業制限の措置については対象となりません。

<労働基準法に関する問い合わせ>
問4 新型コロナウイルスに感染している疑いのある労働者について、一律に年次有給休暇を取得したこととする取扱いは、労働基準法上問題はありませんか。病気休暇を取得したこととする場合はどうですか。

 年次有給休暇は原則として労働者の請求する時季に与えなければならないものですので、使用者が一方的に取得させることはできません。事業場で任意に設けられた病気休暇により対応する場合は、事業場の就業規則等の規定に照らし適切に取り扱ってください。

問5 新型コロナウイルスの感染の防止や感染者の看護等のために労働者が働く場合、労働基準法第33条第1項の「災害その他避けることができない事由によって、臨時の必要がある場合」に該当するでしょうか。

 労働基準法第32条においては、1日8時間、1週40時間の法定労働時間が定められており、これを超えて労働させる場合や、労働基準法第35条により毎週少なくとも1日又は4週間を通じ4日以上与えることとされている休日に労働させる場合は、労使協定(いわゆる36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出ていただくことが必要です。
しかし、災害その他避けることのできない事由により臨時に時間外・休日労働をさせる必要がある場合においても、例外なく、36協定の締結・届出を条件とすることは実際的ではないことから、そのような場合には、36協定によるほか、労働基準法第33条第1項により、使用者は、労働基準監督署長の許可(事態が急迫している場合は事後の届出)により、必要な限度の範囲内に限り時間外・休日労働をさせることができるとされています。労働基準法第33条第1項は、災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の規定ですので、厳格に運用すべきものです。
 なお、労働基準法第33条第1項による場合であっても、時間外労働・休日労働や深夜労働についての割増賃金の支払は必要です。
 御質問については、新型コロナウイルスに関連した感染症への対策状況、当該労働の緊急性・必要性等を勘案して個別具体的に判断することになりますが、今回の新型コロナウイルスが指定感染症に定められており、一般に急病への対応は、人命・公益の保護の観点から急務と考えられるので、労働基準法第33条第1項の要件に該当し得るものと考えられます。
 ただし、労働基準法第33条第1項に基づく時間外・休日労働はあくまで必要な限度の範囲内に限り認められるものですので、過重労働による健康障害を防止するため、実際の時間外労働時間を月45時間以内にするなどしていただくことが重要です。また、やむを得ず月に80時間を超える時間外・休日労働を行わせたことにより疲労の蓄積の認められる労働者に対しては、医師による面接指導等を実施し、適切な事後措置を講じる必要があります。


関連記事
2020年1月28日「厚生労働省新型コロナウイルスに係る電話相談窓口を設置」
https://roumu.com/archives/100687.html

参考リンク
厚生労働省「新型コロナウイルスに関する事業者・職場のQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00002.html
(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/