3月末までに5日の年次有給休暇を取得させなければならないのですか?

 早くも2月となった。コロナウイルスの拡大が景気に与える影響が本当に心配になってきた大熊であった。


大熊社労士
 おはようございます!服部社長、マスク姿とは珍しいですね。コロナウイルス対策ですか?
服部社長服部社長
 えぇ。まあそれも兼ねているのかも知れませんが、少し風邪気味でたまにくしゃみが出るのですよ。インフルエンザでも新型インフルエンザでもないと思うのですが、さすがに周囲が気にするかなと思いまして。
大熊社労士大熊社労士
 なるほど、そういうことですね。それにしてもこの問題はなかなか収束が見えないので、当分続きそうですね。手洗いなどの基本の徹底が最重要とのことですので、社内に通知を出すなど対応をされるとよいと思います。
福島さん
 ありがとうございます。先週末に社内の掲示板でうがい、手洗いの徹底と、マスクの会社支給の案内を出したところです。通常のインフルエンザの対策として、いずれにしても準備を進めていました。
大熊社労士
 なるほど、さすがですね。そういえば宮田部長、今日はなにかご相談があるとか。
宮田部長
 はい、そうなのです。なにかと言えば、例の年次有給休暇の5日取得義務の件なのです。
大熊社労士
 どのようなことでしょうか?
宮田部長宮田部長
 先日、ネットを見ていたところ、「年次有給休暇は3月末までに少なくとも5日を取得させなければならない」と書かれていまして。だとすれば、もう時間がないなと思ったのです。
大熊社労士
 あらら、そんな記事が出ていましたか。それは間違っています。今回の年次有給休暇の取得義務は、10日以上の年次有給休暇が付与される従業員を対象として、付与日から1年以内に少なくも5日を取得させなければならないというものです。あくまでも取得日から1年以内ですから、たまたま改正法施行日の2019年4月1日に年休が付与される人だとすれば、2020年3月31日までに5日の取得をさせる必要がありますが、それ以外の方については違います。
福島照美福島さん
 当社の場合、法律通り入社して6カ月の時点で年休を付与しています。ですから、4月1日入社の従業員の年休取得日は10月1日としています。この場合、2019年10月1日に付与された年休については、その1年後である2020年9月30日までに取得させればよいということですよね?
大熊社労士
 おっしゃるとおりです。
宮田部長
 やはり、そうですよね。ネットでそのように書いてあったので、焦ってしまって、今日確認しようと思っていたのです。
大熊社労士
 はい、大丈夫ですよ。ちなみに1月に取得状況を確認することにされていたと思いますが、状況はいかがでしょうか?
福島さん
 大半の社員は問題なく取得が進んでいるのですが、管理職と営業の社員の取得が遅れています。対策としては、付与日から半年経過したところから、取得が進んでいない社員について連絡し、取得を促すようにしています。みなさん認識はしてくれているので、たぶん問題ないとは思います。
大熊社労士
 なるほど、しっかり管理されているようで安心しました。そうそう、この件に関するトピックですが、労働基準監督署の調査が行われる際に連絡の書面が来ますが、その中に当日の必要資料が書かれているのはご存じではないかと思います。その中に年次有給休暇管理簿が追加されてきていますので、今後は管理簿に基づいて、取得状況の確認が行われることになりそうです。改めて、管理簿の作成と取得状況の確認を進めるようにしておいてくださいね。
宮田部長
 承知しました。ありがとうございます。

>>>to be continued

大熊社労士のワンポイントアドバイス[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
 おはようございます。大熊です。今回は年次有給休暇取得義務化に関する事項を取り上げました。非常に基本的な内容ですが、2月となり、このテーマに関する記事などをネット等で見かけることが増えてきています。ネットの情報は玉石混交ですので、結構間違った内容も多く見られますので、改めて取り上げました。人手不足が深刻な職場も多いことから、なかなか5日の取得ができていない企業も多いと耳にすることがありますが、半日年休なども上手に活用して、取得を進めるようにしましょう。

[関連条文]
労働基準法39条7項
 使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。ただし、第一項から第三項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。

(大津章敬)