新型コロナウイルスに罹患した社員が出た際の賃金はどのようにすればよいですか?

 新型コロナウイルスの問題の深刻化を心配している大熊であった。


大熊社労士
 おはようございます!服部社長、マスクをされていらっしゃるのですね?
服部社長服部社長
 あまり意味がないというような話もありますが、いくらかは効果もあるかと思い、先日よりするようにしています。大熊さんはされていないのですか?
大熊社労士
 いえいえ、御社の敷地に入る直前までしていましたよ。私もいろいろな方にお会いすることが仕事ですから、結構中止しています。
福島さん
 そうですよね。大熊先生の場合は、セミナーの講師をされることも多いですし、新幹線などでの移動も多いですからね。本当に心配ですよね。
大熊社労士
 そうなのです。先日、ある著名な産業医の方に新型コロナウイルス対策で一番重要なことは何ですか?と質問したのですが、正しい手洗いを徹底することとの回答でした。
福島照美福島さん
 やはりそうなのですね。そう思って、先日お手洗いに厚生労働省の正しい手洗いに関するチラシを貼っておきました。だから宮田部長も手洗いの徹底をお願いしますね!
宮田部長宮田部長
 そうだね。なんといっても私はウイルスに弱いからね。毎年のようにインフルエンザにも罹患してしまっているし…。でも今回は万が一のことがあると会社にも本当に迷惑を掛けてしまうので、今回は本当に気をつけます。
服部社長
 よろしく頼みます。さて、現実的な問題として、実際に新型コロナウイルスに罹患した社員が発生した場合、その社員は隔離され、休業することになると思うのですが、その場合の賃金はどうすればよいのでしょうか?
大熊社労士大熊社労士
 はい。この問題に関して押さえておく必要があるのが労働基準法26条です。この条文では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。よってこの問題を考えるにあたっては、その休業が「使用者の責に帰すべき事由」によるものかを検討することになります。
服部社長
 新型コロナウイルスに罹患した場合には、そもそも就業できない訳ですから「使用者の責に帰すべき事由」には当たりませんよね?
大熊社労士
 はい、通常はそのような判断になるでしょう。よって賃金の支払いは不要と考えられます。問題は、本人が罹患しているがどうか分からない状況で休業させる場合ですね。
服部社長
 例えば濃厚接触などの場合ということですね。
大熊社労士
 そうですね。例えば保健所からの指示で隔離されたような場合には罹患した場合と同様に考えればよいと思いますが、そこまでではない場合は問題になりますね。例えば、会社が予防的な措置で休業を命じた場合には「使用者の責に帰すべき事由」によると考えられますので、休業手当の支払いが必要になるでしょう。もっとも私見にはなりますが、今回の目安となっている37.5度の熱が出ているような場合には、そもそも労務提供ができない状態であるのではないかと考えています。ですから、この状態で休業させる場合にそれが「使用者の責に帰すべき事由」に当たるのかはいくらかの疑義が残るのではないかと思います。このようなケースが出た場合にはご本人と話し合って対応を決定してもよいかも知れません。
服部社長
 なるほど、そのように考えるのですね。よく分かりました。
大熊社労士
 今回の新型コロナウイルスは想定以上の社会的影響が出てきていますので、まずは手洗い、うがいなどの予防対策を徹底していきましょう。

>>>to be continued

大熊社労士のワンポイントアドバイス[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
 おはようございます。大熊です。今回は新型コロナウイルスでよく問題になる休業手当について取り上げました。日本ではまだまだ罹患者が増加しており、まだ終息が見えない状況にありますので、まずは予防を徹底すると共に、いざというときに混乱することがないように厚生労働省のホームページなどで基本情報を確認するようにしておきましょう。


参考リンク
厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

(大津章敬)