厚生労働省 新型コロナQ&Aで「日本版レイオフ」に言及

 厚生労働省では、「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」として、企業が人事労務管理をしていく中で、疑問に感じるものを回答しています。

 このQ&Aは随時更新されていますが、メディア報道でも話題になっていた件が想起されるものについて、以下の通りQ&Aが追加されました。


問12 タクシー事業者ですが、乗客が減少して苦境にあります。この状況を乗り切るため、雇用調整助成金をもらって運転者の雇用を維持するのではなく、運転者を一旦解雇して失業手当を受給してもらい、需要が見込めるようになったら再雇用することを考えています。


 タクシーは、日常の移動に欠かすことができない公共交通機関です。このため、タクシー事業者の事業継続は重要であり、運転者の雇用の維持を図ることは大変重要です。雇用の維持に向けた努力が十分になされることを期待しています。

<解雇について>
〇雇用の維持は社会的にも極めて重要であり、政府としては、需要の急減による経営不振等の場合であっても、事業主の雇用継続のための努力を全力で支える方針です。

〇司法でも、解雇が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇は無効になるとの考えで一貫しています。

〇やむを得ず解雇をする場合であっても、原則として、少なくとも30日前に解雇の予告をするか、解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)を支払うことが必要です。

<雇用を維持した場合の事業者の負担>
〇雇用を維持して休業した場合、事業者は運転者に対して休業手当(休業前3か月の平均賃金×60%以上)を支払う必要があります。

<事業者が受けられる支援>
〇こうした事業者の負担への支援として、事業者が経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合、事業者が運転者に支払う休業手当については、解雇等を行わず雇用を維持する中小企業であれば、その90%を雇用調整助成金として助成する(事業者の負担は10%となる)特例措置を実施しています。
なお、助成額は、前年度に雇用していた全ての雇用保険被保険者の賃金総額(歩合制賃金も含む)を基に算定するため、直近の賃金額の減少は助成額に影響しにくい仕組みです。

〇加えて、事業者が売上げ減少の中で休業手当を支払うために手元資金を十分にするため、資金繰り対策として、政府は金融機関に実質無利子・無担保の融資や既存債務の条件変更を働きかけています。また、補正予算の成立を前提に、中小・小規模事業者等に対する新たな給付金も検討していきます。

<従業員が受けられる手当>
〇雇用を維持して休業の場合:休業手当(「休業前3か月の平均賃金」を基礎として算定)
 解雇の場合:雇用保険の基本手当(「離職前6か月の平均賃金」を基礎として算定)
 (例)平均月収30万円の60歳の運転者の直近2カ月の月収が漸減(25万円、20万円)したと仮定した場合     
 ・休業手当:休業前3か月の平均賃金(25万円) × 60%以上
 ・雇用保険の基本手当:離職前6か月の平均賃金(27.5万円) × 約53%※
※給付率は、離職前平均賃金額、年齢に応じて50~80%で変化します。
  詳細は、https://www.mhlw.go.jp/content/000602232.pdfをご覧ください。

〇このように、手当の額は、足下の業績悪化の賃金への影響の程度や個々の運転者の年齢や収入等によるため、どちらの手当の方が多くもらえるかは一概には言えません。

〇また、雇用保険の基本手当は、再就職活動を支援するための給付です。再雇用を前提としており従業員に再就職活動の意思がない場合には、支給されません。

<解雇された従業員に生じるデメリット>
〇社員でなくなることから、国民健康保険・国民年金加入に伴う届出等の手続上の負担、将来受給できるはずであった報酬比例部分の年金額の減少などが生じます。

〇その他、退職後にケガや病気にかかった場合等には、再就職に向けた求職活動などの際に支障となるリスクも懸念されます。


↓「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」(該当箇所)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q4-12


参考リンク
厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html
(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/