雇用調整助成金は実際の休業手当支払額に基づいて支給されるのではないのですか?

 今日、緊急事態宣言が延長されるとのことで、景気や雇用情勢の先行きが心配な大熊であった。


大熊社労士
 おはようございます!
服部社長服部社長
 大熊さん、おはようございます。ゴールデンウィーク中なのに、お越しいただいて申し訳ないですね。当社もご多分に漏れず、新型コロナウイルスの影響が大きくなって来ていまして。
大熊社労士
 そうですよね。数カ月前にはこんな状況はまったく予想していませんでしたが、本当に大変な状況になっています。今日、緊急事態宣言が5月31日まで延長されるということですが、これでトドメを指されてしまう企業が急増するのではないかと心配しています。
宮田部長宮田部長
 本当にそうですよね。先日も地元企業の集まり、まあ集まりと言ってもいまどきな感じでオンラインミーティングだったのですが、に参加しまして。いろいろな企業の状況を聞きましたが、売上が9割減なんていう話があちらこちらにありまして、本当に驚きました。当社も落ち込んではいますが、流石にそこまでではないので。
大熊社労士
 そうですね。コロナ関連倒産も増えてきていますし、私に寄せられる相談も雇用調整助成金ばかりだったのが、ここに来て、派遣社員の契約終了や有期契約従業員の雇止め、正社員の賃下げなどの話が増えてきており、状況の深刻さを実感しています。そういえば、御社の休業と雇用調整助成金申請の状況はいかがでしょうか?
福島さん
 はい、先日よりローテーションでの休業を実施しています。雇用調整助成金はいまガイドブックなどで勉強しているところなのですが、頻繁に制度が改正されるので、ちょっと疲れてきました。
大熊社労士
 本当にそうですよね。毎週のように制度が変更され、支給要領や申請書類なども変更になっていますので、付いていくだけで大変です。まあ、より使いやすい方向に見直してくれている訳ですので、ありがたいはありがたいのですが。
福島照美福島さん
 そうですね。その雇用調整助成金についてなのですが、今後の資金繰りを考える中で、休業手当の支払い額と助成金の受給額を集計しようと思っています。そこで分からなくなってしまったのですが、雇用調整助成金って、中小企業の場合、8割とか9割が支給されるじゃないですか。でもこれって、実際に支払った休業手当の〇割ではないのですか?
大熊社労士
 はい、実はそうなのです。私も最近、在宅勤務を行ったりする日には朝のワイドショーなどを見ることがあるのですが、そういったテレビなどでは実際に支払った休業手当の一体割合が支給されるというような報道が多くみられます。分かりやすく説明しようとしてそうしているのだと思いますが、実際には違いまして、前年度1年間における雇用保険料の算定基礎となる賃金総額を、前年度1年間における1か月平均の雇用保険被保険者数および年間所定労働日数で割った額に、休業手当の支払率と助成金支給率をかけて算出します。
服部社長
 そうなのですか?となると、個々の従業員に支払う休業手当は実際の賃金によってバラバラであるのに対し、雇用調整助成金は要は前年度の雇用保険被保険者の平均賃金をベースに画一的に計算するということでしょうか?
大熊社労士大熊社労士
 さすが服部社長、理解が早いですね。そうなのです。これがなかなか分かって頂けず、現場では結構混乱が起きています。更には1日1人あたりの上限額が8,330円とされていますので、その金額以上の額となる場合には上限の8,330円が支給されます。もっともこの上限額は首相から見直しの指示が出ているとされていますので、近日中に引き上げられる可能性が高いとは思います。
服部社長
 そうなのですね。私も完全に誤解していました。そうなると休業する従業員の賃金水準によって、会社は得をしたり、損をしたりするような感じなのですね。
大熊社労士
 そうなります。まあ、支給申請の負担を考えれば、個人の休業手当支払額に基づいて助成金を計算するとなると、かなりの事務負担が増えますので、私はこれで仕方ないかなと思っています。
福島さん
 よく分かりました。それではちょっと大変ですが、助成金受給のためのいろいろな書類をまとめていきます。またわからないことがあれば、お電話させていただきますね。
大熊社労士
 承知しました。

>>>to be continued

大熊社労士のワンポイントアドバイス[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
 おはようございます。大熊です。雇用調整助成金の混乱が続いています。先日も助成率10分の10の取扱いが発表されましたが、制度が改善されるのはよいとしても、実務が付いていかないですね。上限額の引き上げという大きな論点は残っていますが、既にかなり簡素化していますので、あとはしっかりと申請を行っていくことが重要です。今回のテーマは多くの経営者が誤解していることを取り上げました。今後も制度変更が見込まれますが、全国的に社労士も企業のバックアップができるように体制強化を進めていますので、必要に応じて、お近くの社労士または社労士会にご相談ください。

(大津章敬)