パワハラ防止措置の義務化を受け、精神障害の労災認定の基準も一部見直しへ
[追記]2020年5月15日に正式な報告書が出されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11305.html
2020年5月11日、厚生労働省で開催された精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会の中で、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書(案)」が示されました。
今回の見直しは、新たな医学的知見に基づきパワーハラスメントに係る出来事を新たに評価対象とするものではなく、パワーハラスメント防止対策の法制化等に伴い職場における「パワーハラスメント」の用語の定義が法律上規定されたことを踏まえ、心理的負荷評価表の明確化、具体化に資するため、現行の認定基準を前提として、パワーハラスメントに係る出来事についての心理的負荷評価表への追記及びこれに伴う心理的負荷評価表の整理を検討するものとなっています。
従来、パワーハラスメントを受けたことによる心理的負荷の強度等については、対人関係の類型の一つである、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の具体的出来事に当てはめて評価されてていますが、今後は心理的負荷評価表の具体的出来事として、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」が追加される方向です。
その上で新設される「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」は、これまで、具体的出来事「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」において評価されていたことに加え、過去の支給決定事例からみても、同出来事における平均的な心理的負荷の強度と同様に評価することが妥当であると考えられることから、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」の具体的な出来事に係る平均的な心理的負荷の強度は、「Ⅲ」とすることが相当とされています。
また、心理的負荷の強度が「強」となる具体例については、次のように示される方向となっています。
・上司等から治療を要する程度の暴行等の身体的攻撃を受けた場合
・上司等から暴行等の身体的攻撃を執拗に受けた場合
・上司等による次のような精神的攻撃が執拗に行われた場合
(1)人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃
(2)必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃
・上司等から心理的負荷としては「中」程度の身体的攻撃・精神的攻撃を受けた場合であって、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった場合
パワーハラスメントの防止措置の義務化は6月からとなっていますが、こういったところにも影響が出てきています。
参考リンク
厚生労働省「第5回「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11184.html
(大津章敬)