[年金制度改正法①]短時間労働者への社会保険適用拡大(2024年10月には51人以上規模へ)

 2020年1月から第201回通常国会も来週に会期末を迎える予定です。この国会では「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」(年金制度改正法)が2020年5月29日に成立し、2020年6月5日に公布されました。そこでこの法律のうち、企業に影響の出る点をピックアップして連載で解説します。

 社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用事業所において、社会保険の被保険者となる人は、正社員の他、1週間の労働時間数および1ヶ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上であるパートタイマー・アルバイト等(以下、まとめて「パート」という)です。
 これに加え、正社員の所定労働時間および所定労働日数が4分の3未満であっても、従業員数501人以上の企業で、以下の4つの要件をすべて満たす従業員(短時間労働者)は、被保険者になります。
 ①週の所定労働時間が20時間以上あること
 ②雇用期間が1年以上見込まれること(※)
 ③賃金の月額が8.8万円以上であること
 ④学生でないこと

 今回の改正では、この短時間労働者への社会保険の適用拡大が行われることになり、2022年10月からは従業員数101人以上の企業、2024年10月には51人以上の企業について、①~④のすべての要件を満たした人が短時間労働者も被保険者となります。

 適用拡大を判断する際の従業員数とは、適用拡大する前の被保険者数を指しており、例えば社会保険に加入している正社員数80人、社会保険に加入していないパート数30人の場合には、合計をすると従業員数110人となりますが、社会保険に加入している人数は80人であるため、2024年10月からの適用拡大に該当します。

 社会保険料の負担は企業にとっても、従業員にとっても大きいものですので、適用拡大後の社会保険料負担の意識した労働時間および労働日数の設定を今後検討していく必要があります。

※「雇用期間が1年以上見込まれること」も変更となるため、次回の連載でとり上げます。


参考リンク
厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00006.html
法令等データベース「「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」の公布について(通知)」
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T200611T0010.pdf
日本年金機構「従業員を採用したときの手続き」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/hihokensha1/20150422.html
(宮武貴美)