骨太の方針2020原案に見る今後の労働関係制度改正の方向性
先日行われた経済財政諮問会議で、経済財政運営と改革の基本方針(いわゆる骨太の方針)2020の原案が示されました。今回の新型コロナの問題を「百年に一度の危機」と表現し、ウィズコロナの中での政策の基本方針について述べられています。
本日はこの中から、「新しい働き方・暮らし方」の中でも、人事労務管理に影響が大きい部分を引用して、ご紹介したいと思います。
(1)働き方改革
- 働き方改革関連法の着実な施行に取り組むとともに、感染症への対応として広まったテレワークがもたらした、新たな働き方やワーク・ライフ・バランスの取組の流れを後戻りさせることなく最大限活かし、従業員のやりがいを高めるためのフェーズ2の働き方改革に向けて取組を加速させる。
- 労働時間の管理方法のルール整備を通じた兼業・副業の促進など複線的な働き方や、育児や介護など一人一人の事情に応じた、多様で柔軟な働き方を労働者が自由に選択できるような環境を整備し、RPAの活用を含む更なる生産性向上に向けた好循環を作り出す。
- あわせて、不本意非正規雇用の解消を図る。
- テレワークの定着・加速を図るため、新たなKPIを策定するとともに、中小企業への導入に向けて、専門家による無料相談対応や全国的な導入支援体制の構築など各種支援策を推進する。さらに、事業場外みなし労働時間制度の適用要件に関する通知内容の明確化や関係ガイドラインの見直しなど、実態を踏まえた就業ルールの整備に取り組む。
- テレワークの浸透に伴い、個人の職務の内容や責任の更なる明確化が求められている現下の状況を、業務等の遂行に必要な知識や能力を有するジョブ型正社員の更なる普及・促進に向けた格好の機会と捉え、必要な雇用ルールの明確化や各種支援に取り組む。こうした中で、労働者が職務の範囲内で裁量的・自律的に業務を遂行でき、企業側においても、こうした働き方に即した、成果型の弾力的な労働時間管理や処遇ができるよう、裁量労働制について、実態を調査した上で、制度の在り方について検討を行う。
- 政府として一体的にフリーランスの適正な拡大を図るため、保護ルールの整備を行う。
(2)少子化対策・女性活躍
- 少子化は社会経済に多大な影響を及ぼす国民共通の困難であり、「86万ショック」とも呼ぶべき状況も踏まえ、直ちに立ち向かう必要がある。少子化対策、女性活躍及び働き方改革を相互に密接に連携して推進する。
- 「希望出生率1.8」の実現に向け、「少子化社会対策大綱」に基づき、将来の子供達に負担を先送りすることのないよう、安定的な財源を確保しつつ、有効性や優先順位を踏まえ、できることから速やかに着手する。例えば、結婚支援、不妊治療への支援、仕事と子育てを両立できる環境整備、男性の家事・育児参画の促進、地域等での支援で安心し妊娠・出産、子育てできる環境整備、児童手当、保育所の利用、住宅政策等の多子世帯への支援など、総合的な少子化対策を進める。
- 出産後に女性の正規雇用比率が低下するいわゆるL字カーブの解消に向け、継続就業率の新たな目標の実現に向けた取組を推進するとともに、女性の正規化を重点的に支援する。就業調整の解消や女性に集中する子育ての負担の軽減に取り組む。配偶者の出産直後の男性の休業を促進する枠組みの検討など、男性の育児休業取得を一層強力に促進する。
このように今後の法改正の占うような記述が多く見られます。年明けの通常国会に向け、様々な動きが見られると予想されますので、各種報道などもチェックしていきましょう。
参考リンク
内閣府「選択する未来2.0」
https://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/future2/index.html
内閣府「令和2年第10回経済財政諮問会議」
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2020/0708/agenda.html
(大津章敬)