増加する新型コロナウイルス感染症に関する労災請求件数と認定事例
新型コロナウイルス感染症はPCRの陽性者が増加しており、第二波の到来ではないかと懸念されています。厚生労働省は、仕事が理由で新型コロナウイルス感染症に罹患した場合には、労災認定をし労災補償を行うことにしており、「調査により感染経路が特定されなくとも、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合には、これに該当するものとして、労災保険給付の対象とすること」という通達(令和2年4月28日基補発0428第1号)を発出し対応しています。
これに関連し、新型コロナウイルス感染症の罹患者が増加していることもあり、労災請求件数も増加、2020年7月14日18時現在では、631件の請求件数、126件の支給件数になっています。
また、労災認定事例も公開し、以下のように医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されない場合の事例も案内されています。
【事例7】小売店販売員
小売店販売員のGさんは、店頭での接客業務等に従事していたが、発熱、咳等の症状が出現したため、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。
労働基準監督署において調査したところ、Gさんの感染経路は特定されなかったが、発症前の14日間の業務内容については、日々数十人と接客し商品説明等を行っていたことが認められ、感染リスクが相対的に高いと考えられる業務に従事していたものと認められた。
一方、発症前14日間の私生活での外出は、日用品の買い物や散歩などで、私生活における感染のリスクは低いものと認められた。
医学専門家からは、接客中の飛沫感染や接触感染が考えられるなど、当該販売員の感染は、業務により感染した蓋然性が高いものと認められるとの意見であった。
以上の経過から、Gさんは、新型コロナウイルスに感染しており、感染経路は特定されないが、従事した業務は、顧客との近接や接触が多い労働環境下での業務と認められ、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと判断されることから、支給決定された。
労災認定されるかは個別判断になりますが、このように感染経路が特定されない場合であっても、認定が行われていることがわかります。
参考リンク
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に関する労災請求件数等」
https://www.mhlw.go.jp/content/000627234.pdf
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る労災認定事例」
https://www.mhlw.go.jp/content/000647877.pdf
(宮武貴美)