衛生委員会をオンラインで行う際の考え方と留意点
新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークが進んだり、複数人が集まる会議を中止したりすることで、、衛生委員会や安全衛生委員会(以下、「安全委員会等」とう)を開催できない状況になった企業もありました。
この状況に対し、厚生労働省は新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)により、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止する観点から、安全委員会等を開催するに際してはテレビ電話による会議方式にすることや、開催を延期することなど、一定の期間、弾力的な運用を図ることとして差し支えない旨の通知を出していました。
これに関連し、2020年8月27日に「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第17条、第18条及び第19条の規定に基づく安全委員会等の開催について(令和2年8月27日基発0827第1号)」が発出され、オンラインでの安全委員会等の開催について、以下のとおり、基本的な考え方と留意事項を示しました。
1.基本的な考え方
安全委員会等は、事業者が講ずべき安全衛生対策の推進について、事業者に対して意見を述べさせるために設置・運営されるものであり、労使が協力し合い、事業場における安全衛生に係る事項について、十分に調査審議を尽くすことが必要不可欠である。
近年の急速なデジタル技術の進展に伴い、情報通信機器を用いて安全委員会等を開催することへのニーズが高まっているが、情報通信機器を用いた開催においても、事業場における安全衛生に係る問題の十分な調査審議が確保されるよう、事業者は、記の2.に留意の上、事業場の実情に応じた適切な方法により、安全委員会等の設置・運営を行う必要がある。
2.情報通信機器を用いた安全委員会等の開催に係る留意事項
(1)安全委員会等の開催に用いる情報通信機器について、次のアからウまでの要件を全て満たすこと。
ア 安全委員会等を構成する委員(以下「委員」という。)が容易に利用できること。
イ 映像、音声等の送受信が常時安定しており、委員相互の意見交換等を円滑に実施することが可能なものであること。
ウ 取り扱う個人情報の外部への情報漏洩の防止や外部からの不正アクセスの防止の措置が講じられていること。
(2)安全委員会等の運営について、次のア又はイのいずれかの要件を満たすこと。
ア 対面により安全委員会等を開催する場合と同様に、情報通信機器を用いた安全委員会等において、委員相互の円滑な意見交換等が即時に行われ、必要な事項についての調査審議が尽くされていること。
なお、音声通信による開催やチャット機能を用いた意見交換等による開催については、調査審議に必要な資料が確認でき、委員相互の円滑な意見交換等及び必要な事項についての十分な調査審議が可能であること。
イ 情報通信機器を用いた安全委員会等はアによって開催することを原則とするが、委員相互の円滑な意見交換等及び必要な事項についての十分な調査審議が可能となるよう、開催期間、各委員への資料の共有方法及び意見の表明方法、委員相互で異なる意見が提出された場合の調整方法、調査審議の結果を踏まえて事業者に対して述べる意見の調整方法等について次の(ア)から(エ)までに掲げる事項に留意の上、予め安全委員会等で定められている場合は、電子メール等を活用した即時性のない方法により開催することとして差し支えないこと。
(ア)資料の送付等から委員が意見を検討するための十分な期間を設けること。
(イ)委員からの質問や意見が速やかに他の委員に共有され、委員間で意見の交換等を円滑に行うことができること。その際、十分な調査審議が可能となるよう、委員全員が質問や意見の内容を含む議論の経緯を確認できるようにすること。
(ウ)委員からの意見表明等がない場合、当該委員に対し、資料の確認状況及び意見提出の意思を確認すること。
(エ)電子メール等により多数の委員から異なる意見が提出された場合等には委員相互の意見の調整が煩雑となることから、各委員から提出された意見の調整に必要な連絡等を行う担当者を予め定める等、調査審議に支障を来すことがないようにすること。
(3)その他の留意事項
情報通信機器を用いて開催した安全委員会等においても、委員会の意見及び当該意見を踏まえて講じた措置の内容のほか、委員会における議事で重要なものについて、法第103条第1項及び労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第23条第4項に基づき、書面により記録し、これを保存する必要があること。
なお、電磁的記録※により作成及び保存する場合には、平成17年3月31日付け基発第0331014号「厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令について」記の第2の1の(4)において「労働基準局所管法令の規定に基づく書類については、労働基準監督官等の臨検時等、保存文書の閲覧、提出等が必要とされる場合に、直ちに必要事項が明らかにされ、かつ、写しを提出し得るシステムとなっていることが必要であること」等とされていることに留意する必要があること。
※電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。
テレワークを実施する企業であれば、テレワークならではの安全や衛生に関する課題が出てきていると思います。労使双方が安全で働きやすい環境を整備するための議論ができるような会議にしていく必要があるのでしょう。
参考リンク
法令等データベースサービス「◦情報通信機器を用いた労働安全衛生法第17条、第18条及び第19条の規定に基づく安全委員会等の開催について(令和2年8月27日基発0827第1号)」
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T200901K0020.pdf
(宮武貴美)