週20時間以上で社会保険に加入するパートの範囲が従業員数50名超まで拡がります
大熊が服部印刷に出向くと、福島さんが書類の仕分け作業のようなことをやっていた。
福島さん
大熊先生、おはようございます。
大熊社労士
年末調整の準備ですか?たいへんそうですね。
宮田部長
今年は何やら様式が大きく変わって、特に従業員の記入がたいへんになりそうです。ただ、当社はコロナの影響を受け、パートさんの収入も減少傾向にあり、例年の収入の調整がなさそうでほっとしています。
福島さん
一部のパートさんは年収を130万円だったり、103万円だったりに抑えようとするので、年末の繁忙時期に休ませてほしいという要望が出てきたりしていました。
大熊社労士
やはり、配偶者や家族の扶養の範囲内で働くことを考えるパートさんは多いのですね。さて、これに関連することで、近い将来のパートさんの社会保険の加入についてご説明しておきたいと思います。
宮田部長
確か、パートさんは正社員の所定労働日数や所定労働時間の4分の3以上の人が社会保険に加入しますよね?
大熊社労士
はい、御社ではその基準となります。ただし従業員数が500名を超える企業では、その基準が異なっています。
福島さん
確か、週20時間以上働くパートさんが加入するという基準でしたよね。
大熊社労士
そうです。現時点では、従業員数が500名を超える企業で以下の4つの要件をすべて満たしたパートさんが被保険者になります。
1.週の所定労働時間が20時間以上あること
2.雇用期間が1年以上見込まれること
3.賃金の月額が8.8万円以上であること
4.学生でないこと
この従業員数の規模の基準が今後、引下げられていきます。
宮田部長
え!1.の基準から見ると、社会保険には入っていないけど、雇用保険には入っている人が、社会保険に入るってことですね。うちのパートさんにも何名かいるなぁ。
大熊社労士
まずはその基準で判断するとよいのかもしれません。ただし、繰り返しになりますが、4つの要件をすべて満たした場合に加入することになるので、雇用保険の加入者と同一になったわけではありません。また、今後、2.の要件は変更になることが決まっています。
服部社長
従業員数の規模の変更はいつ頃、行われるのですか?
大熊社労士
はい、2022年10月に従業員数100名超規模に、2024年10月に従業員数50名超規模に変わります。
宮田部長
そいういうことは、うちの会社は2024年10月から適用されることになるのですね。
福島さん
でも・・・自信はないのですが・・・確か従業員数500名超の基準って、厚生年金保険の被保険者数で判断するのでしたよね?
大熊社労士
そうです!御社は確かに常時雇用する従業員数としては50名を超えていますが、厚生年金保険の被保険者となると、50名を下回っているかもしれませんね。
服部社長
なるほど、いろいろ基準が違うのですね。まだ4年後のことではあるものの、今後、事業経営としても拡大していくのかといった観点から、従業員数の規模も含めてどのような会社に考える必要がありそうですね。
大熊社労士
そうですね。4つの要件に関する変更についても、もう少しお話したいところでしたが、改めて説明しますね。
福島さん
ありがとうございます。ひとまず、私の方では社会保険に加入している被保険者数を確認しておくことにしますね。
>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
おはようございます。2020年5月29日に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」(年金制度改正法)が成立し、6月5日に公布されました。今回のテーマはこの改正法に盛り込まれている内容です。いくつかの影響のある事項について、数回にわけてご説明します。
参考リンク
厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00006.html
日本年金機構「適用事業所と被保険者」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.html(宮武貴美)