退職後の失業手当がもらえるまでの期間が短縮されました

 大熊が服部印刷に到着すると、社長が迎え入れてくれた。


服部社長服部社長
 こんにちは。すっかり秋らしくなりましたね。先日のニュースでは、新型コロナの影響での解雇や雇止め等(予定を含む)が全国で6万人を超えたとかで、雇用環境の厳しさがうかがえますね。
大熊社労士
 確かに雇用調整助成金の支給申請件数を見ても、高止まりしています。雇用調整助成金は休業後に休業手当を支給してから申請するものですので、リアルタイムの休業の状況を示しているわけではありませんが、まぁ、あまりよい話は耳に入ってきませんね。
服部社長
 そういえば、さっき福島さんが大熊さんに何か確認したいと言っていたけど、なんだったっけ?
福島照美福島さん
 社長ありがとうございます。今お話が出ていたように、解雇や雇止めの場合は、失業手当がすぐにもらえると思うのですが、今度、自己都合で退職する従業員から失業手当が早くもらえるようになったんですよね?と聞いて、何のことかわからなかったのです。
大熊社労士
 あぁ、退職した後のことで実務への関係が小さいということで、私がご説明を差し上げていなかったことかもしれません。実は、雇用保険の取扱いが若干変わり、給付制限期間が短くなったのです。
宮田部長
 給付制限期間というのは、確か自己都合で辞めると3ヶ月間は失業手当がもらえないよ、というやつですね。
大熊社労士
 はい、それです。実は、2020年10月1日以降の退職から、「3ヶ月」が「2ヶ月」に変更になりました。
宮田部長
 え、そうなんですか!?
大熊社労士
 もう少し、前提から正確に説明しておきましょうね。雇用保険に加入している従業員が退職をすると、会社から離職票を受け取り、ハローワークに出向きます。ハローワークでは離職票の内容を確認して、失業手当(基本手当)の日額や支給される日数等が決まります。その際、離職理由によって、給付制限が設けられることになります。このうち、給付制限が変更となるのは、正当な理由がない自己都合退職です。つまり、単純に転職するために会社を辞めます、というようなときですね。
宮田部長宮田部長
 今までも、失業手当をなるべく早くもらいたいから、退職理由を会社都合にしてほしいというような要望は多く寄せられていたよね、福島さん。
福島さん
 そうですね。2ヶ月に短くなると、少しはそのような要望は減るかもしれませんね。
大熊社労士
 離職理由は正確に、事実を記載しないと不正受給と言われますので、そのようなの要望は当然、受けられないですよね。さて、この給付制限の期間が短くなる取扱いですが、先ほどもご説明したように、2020年10月1日以降に退職したものから、5年間のうち3回までが対象です。つまり、5年間のうち3回目からは従前の3ヶ月となります。
宮田部長
 1年くらい働いたら退職して失業手当をもらって、また、就職して1年くらい働いたら退職して失業手当をもらって・・・というのを避けるためですね。
大熊社労士
 そうですね。給付制限が3ヶ月あることで、失業手当をもらうために、少しのんびりしてから転職活動をするという人も出てきて、給付制限の期間を短くすることで早期の転職を促すことにもつながるのでしょう。
福島さん
 そういえば、以前、懲戒解雇の従業員は、同じ「解雇」でも給付制限が設けられると勉強した覚えがあるのですが、懲戒解雇の従業員の給付制限も2ヶ月になるのでしょうか?
大熊社労士大熊社労士
 いえ、給付制限が短くなるのは、正当な理由がない自己都合により退職した場合ですので、懲戒解雇等を含む自己の責めに帰すべき重大な理由で退職したときはこれまでどおり3ヶ月です。
服部社長
 かなりややこしくなった印象ですね。退職後のこととは言え、当社で働いてくれた従業員なのだから、説明はしっかりするようにしよう。宮田部長、福島さん、よろしくね。
>>to be continued
大熊社労士のワンポイントアドバイス[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
 おはようございます。大熊です。この給付制限の短縮は、2020年10月1日以降の退職に対して適用されるものであるため、9月30日以前の自己都合退職は、給付制限が3ヶ月となり、5年間のカウントにも影響しません。


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2020年6月18日「「給付制限期間」が2か月に短縮されます~ 令和2年10月1日から適用~」
https://roumu.com/archives/103457.html
参考リンク
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koyouseisaku1.html
(宮武貴美)