コロナ拡大後に在宅勤務を導入した企業の9.6%が通勤手当を廃止・実費精算へ
新型コロナウイルス感染症にかかる緊急事態宣言が発令されたことを受け、多くの企業で在宅勤務が導入されました。その後、若干感染が落ち着き、元の働き方に戻した企業もありますが、一方では「基本は在宅勤務」という働き方を志向する企業も増えつつあります。
そのような企業で増加しているのが、通勤手当の廃止=実費支給化と、通信費などの費用補助の取り組みです。今回は労務行政研究所の「新型コロナウイルス感染症への企業の対応アンケート」中から、これらの状況について取り上げます。
(1)通勤手当の取り扱い
感染拡大前の時点で在宅勤務を導入していた場合は、「定期券代など定額を支給しているため、特別な対応はしない」が 72.1%、「実費精算のため、在宅勤務時は支給しない」が19.7%となっていますが、感染拡大後に在宅勤務を導入・実施した場合は、「定期券代など定額を支給しているため、特別な対応はしない」が87.1%に上り、感染拡大前から在宅勤務を導入している企業と比べて 15.0ポイント高くなっています。
(2)在宅勤務時に発生する通信費や光熱費などの費用補助(在宅勤務手当・テレワーク手当の支給)
在宅勤務時に発生する通信費や光熱費などの費用補助の対応については、感染拡大前の時点で在宅勤務を導入していた場合、手当を「支給しない」が67.1%、そして「テレワーク手当などの形で、一括して定額で支給」が15.8%、「通信費・光熱費などの費目ごとに支給」が3.4%となっており、合計で19.2%が費用補助を行っています。これに対して、感染拡大後に在宅勤務を導入・実施した場合は、「支給しない」が 76.9%で、先ほどの数値よりも9.8ポイント高くなっています。その結果、費用補助を行うのは、「定額で支給」5.9%と「費目ごとに支給」3.6%を合わせた9.6%にとどまっています。
このように感染拡大後に在宅勤務を導入した企業では、まだまだ在宅勤務自体を試行錯誤の中で進めていることが多く、制度面の整備までは進んでいないと考えられます。今後、在宅勤務が通常の働き方の一つと認識されるにつれ、こうした取り組みは増加が予想されます。
参考リンク
労務行政研究所「新型コロナウイルス感染症への企業の対応アンケート」
https://www.rosei.or.jp/research/pdf/000078957.pdf
(大津章敬)