今後検討される企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大

 労働基準法では、労働者の労働時間に応じて賃金を支払う事を原則としていますが、業務の性質上、業務の遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があり、業務遂行の手段と時間配分等に関し、使用者が具体的な指示をすることが困難な(または具体的な指示をしないこととする)業務もあります。そのような業務のうち、一定の要件を満たすものは、実際の労働時間ではなく労使協定または労使委員会が定めた時間労働したものとみなすことのできる裁量労働制を適用することができます。

 この裁量労働制には、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」がありますが、自らの知識や技術、創造的な能力を活かし、業務の進め方や時間配分に関して主体性をもって働くことができる制度である企画業務型裁量労働制について、対象業務を拡大することを日本商工会議所が規制改革推進会議(雇用・人づくりワーキング・グループ)に提案しています。

 提案理由として以下の2点を挙げています。
・経済・社会の構造変化や労働者の就業意識の変化等により、企画業務型裁量労働制の制度の対象業務が限定的であり、ホワイトカラーの業務の複合化等に対応できていないといった指摘があること
・高度な知識や技術、創造的な能力を有する労働者が複合化された業務に主体性をもって取り組むことは、創造性のさらなる発揮や労働生産性の向上に資するものであること

 企画業務型裁量労働制は、働き方改革関連法案で見直しの議論があったものの、国会審議の段階で削除されており、日本商工会議所は実態調査を実施したうえで早急に検討を再開し、対象業務の拡大を早期に実現すべきである、としています。

 これに対し、厚生労働省は以下のよう対応することを示しており、今後、企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大について、再度、制度のあり方から検討される予定です。

 「裁量労働制については、実態を正確に調査・把握した上で、制度のあり方について検討することとされています。このため、裁量労働制の実態を把握するための調査について、平成30年9月から、統計学者や労働経済学者、労使関係者を含む専門家による検討会において議論の整理を行い、令和元年5月に一般統計としての総務大臣承認を受けました。同年11月から本調査を開始したところであり、その結果を踏まえて、制度のあり方について、労働政策審議会において検討いただきたいと考えております。

 労働時間の取扱いを柔軟にする裁量労働時間制では、働きすぎ・働かせすぎがしばしば問題になりますが、一方で制度をうまく利用することで、労働者の働くことの自由度は増し、高い能力発揮も期待できます。今後、労働政策審議会の議論も継続的に確認していきましょう。


参考リンク
内閣府「規制改革推進会議 第2回 雇用・人づくりワーキング・グループ 資料」」
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/koyou/20201023/agenda.html
(宮武貴美)