1ヶ月5人以上の高年齢者を解雇等した時に提出が必要な多数離職届の変更

 従業員が自己都合で退職するときには、離職票の発行等、退職者本人に渡すべきものの手続きは行いますが、会社として退職者の一覧のようなものを官公署に提出する必要はありません。

 一方で、事業規模の縮小等に伴い、1ヶ月以内に30人以上の従業員が退職を余儀なくされることが見込まれる場合、最初の離職が発生する1ヶ月前までに「再就職援助計画」を作成し、ハローワークに提出し、認定を受けることが義務づけられています(雇用対策法24条)。また、自己都合または自己の責めに帰すべき事由によらず、1ヶ月以内に30人以上の退職者が発生する場合、最後の退職が発生する1ヶ月までに、その退職者の数等について、ハローワークに「大量雇用変動届」の提出が義務付けられています(雇用対策法27条)。さらに、1ヶ月以内に5人以上の高年齢者等が解雇等により退職させる場合は「多数離職届」をハローワークに提出する義務があります(高年齢者雇用安定法第16条)。

 今回、高年齢者雇用安定法が改正され、70歳までの就業機会の確保が努力義務となることに伴い、この多数離職届の提出基準が以下のように変更になりました。

■現行の対象者
1.解雇その他の事業主の都合により離職する45歳~65歳までの者
2.平成24年改正の経過措置として、継続雇用制度の対象者について基準を設けることができ、当該基準に該当せずに離職する者

■変更後の対象者
1.解雇その他の事業主の都合により離職する45歳~70歳までの者
2.平成24年改正の経過措置として、継続雇用制度の対象者について基準を設けることができ、当該基準に該当せずに離職する者
3.65歳以上の高年齢者就業確保措置において、対象者基準に該当せず離職する者
4.65歳以上の高年齢者就業確保措置において、上限年齢に達したことにより70歳未満で離職する者

 多数離職届の様式も変更になり、現在、準備が行われています。施行は2021年4月ですが、今後、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で解雇等も増える可能性があることから、改正点とともにこのような届出が義務化されていることも確認しておきましょう。


参考リンク
厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koureisha/topics/tp120903-1_00001.html
(宮武貴美)