厚労省 育児休業中に可能な一時的・臨時的な就労の例示を公表

 育児休業の取得率や復帰率が高まり、次第に企業は育児休業中の従業員も欠かせない戦力と感じるように考え方がシフトしています。そのような背景からか、育児休業中であっても育児休業中の従業員に一時的に勤務を打診したり、求めたりすることが実務上、見受けられるようになりました。

 しかし、育児・介護休業法上の育児休業は、子どもの養育を行うために、休業期間中の労務提供義務を消滅させる制度です。そのため、休業期間中に就労することは想定されていません。

 一方で、労使の話し合いにより、子の養育をする必要がない期間に限り、一時的・臨時的にその事業主の下で就労することは認められています。

 今回、厚生労働省から「育児休業中の就労について」というリーフレットが公開され、一時的・臨時的に就労と該当する例と該当しない例が示されました。

[一時的・臨時的に就労と判断される例]
・育児休業開始当初は、労働者Aは育児休業期間中に出勤することを予定していなかったが、自社製品の需要が予期せず増大し、一定の習熟が必要な作業の業務量が急激に増加したため、スキル習得のための数日間の研修を行う講師業務を事業主が依頼し、Aが合意した場合
・労働者Bの育児休業期間中に、限られた少数の社員にしか情報が共有されていない機密性の高い事項に関わるトラブルが発生したため、当該事項の詳細や経緯を知っているBに、一時的なトラブル対応を事業主が依頼し、Bが合意した場合
・労働者Cの育児休業期間中に、トラブルにより会社の基幹システムが停止し、早急に復旧させる必要があるため、経験豊富なシステムエンジニアであるCに対して、修復作業を事業主が依頼し、Cが合意した場合
・災害が発生したため、災害の初動対応に経験豊富な労働者Dに、臨時的な災害の初動対応業務を事業主が依頼し、Dが合意した場合
・労働者Eは育児休業の開始当初は全日を休業していたが、一定期間の療養が必要な感染症がまん延したことにより生じた従業員の大幅な欠員状態が短期的に発生し、一時的にEが得意とする業務を遂行できる者がいなくなったため、テレワークによる一時的な就労を事業主が依頼し、Eが合意した場合

[一時的・臨時的に就労と判断される例]
・労働者Fが育児休業開始当初より、あらかじめ決められた1日4時間で月20日間勤務する場合や、毎週特定の曜日または時間に勤務する場合

 ポイントは、労働者が自ら事業主の求めに応じ、合意することであり、会社の一方的な指示により就労させることはできません。また、就労が月10日(10日を超える場合は80時間)以下であれば、育児休業給付金が支給されます。

 これらはあくまでも例示であり、これら以外でも一時的・臨時的就労に該当する場合がありますが、恒常的・定期的な終了は、育児休業をしていることにはなりません。

 従業員に勤務を打診する場合には、これらの例示が掲載された以下のリーフレットを参考にするとよいでしょう。

↓リーフレット「育児休業中の就労について」
https://roumu.com/archives/105483.html


関連記事
2020年12月20日「育児休業中の就労について」
https://roumu.com/archives/105483.html
参考リンク
厚生労働省「育児休業中の就労について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15420.html
(宮武貴美)