雇用調整助成金の今後の予定を示した「 新たな雇用・訓練パッケージ」

 先日、厚生労働省から「新たな雇用・訓練パッケージ」が公開されました。これは、新型コロナウイルス感染症による雇用への影響が長期化しており、雇用情勢に厳しさがみられる中で、休業や離職を余儀なくされた人、シフトが減少したシフト制で働く人、生活に困窮する人などを支援するために作られたものです。このうち、雇用調整助成金に関する点をご紹介します。

1.雇用調整助成金の今後の方向性
 雇用調整助成金等については、緊急事態宣言が全国で解除された月の翌月末まで現行の特例措置が継続されることが公表されています。(日額上限15,000円、中小企業のほか、一定の大企業についても最大10/10助成。)

 そのうえで、雇用情勢が大きく悪化しない限り、緊急事態宣言が全国で解除された月の翌々月(現行の緊急事態宣言を前提とすると5月)から2ヶ月間の措置は以下のとおり、原則的な措置を段階的に縮減するとともに、感染が拡大している地域・特に業況が厳しい企業について特例が設けられます

【原則的な措置】
・雇用調整助成金等の1人1日あたりの助成額の上限
   :13,500円(現行15,000円)
・事業主が解雇等を行わず、雇用を維持した場合の中小企業の助成率
   :9/10(現行10/10)
※休業支援金等の1人1日あたりの助成額の上限
   :9,900円(現行11,000円)

【感染が拡大している地域・特に業況が厳しい企業の雇用維持を支援する特例】
 上限額15,000円、助成率最大10/10(中小企業、大企業)

 この2ヶ月間の経過後(現行の緊急事態宣言を前提とすると7月以降)については、雇用情勢が大きく悪化しない限り、【原則的な措置】および【感染が拡大している地域・特に業況が厳しい企業の雇用維持を支援する特例】がそれぞれ更に縮減されます

2.大企業のシフト制労働者等への休業支援金・給付金の適用
 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(以下「休業支援金・給付金」という。)については、中小企業の労働者が対象ですが、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、シフト制で働く労働者等が多い飲食店等を中心に大企業にも大きな影響が生じているため、大企業労働者の中でも、休業手当を受け取りづらい、シフト制等の勤務形態で働く労働者が休業手当を受け取れない場合に、例外的に休業支援金・給付金の対象となります。

3.雇用調整助成金の雇用維持要件の緩和
 緊急事態宣言対象地域の知事の要請を受けて営業時間の短縮等に協力する飲食店等の大企業や、生産指標(売上等)が前年または前々年同期と比べ最近3ヶ月の月平均値で30%以上減少した全国の大企業に関して、宣言が全国で解除された月の翌月末まで、雇用調整助成金等の助成率を以下のとおり最大10/10となります。

・解雇等を行わない場合の助成率10/10(これまでの特例措置3/4)
・解雇等を行っている場合の助成率4/5(これまでの特例措置2/3)

 さらに、中小企業の全ての事業所を対象として、2021年1月8日以降、緊急事態宣言解除月の翌月末までの休業等については、現行の特例措置として2020年1月24日以降の解雇等の有無により確認されている雇用維持要件を緩和し、2021年1月8日以降の解雇等の有無により、適用する助成率が判断されます。

 雇用調整助成金の特例措置は更に複雑化してきている印象がありますが、該当する場合には内容を押さえて誤りのない申請をしましょう。


参考リンク
厚生労働省「新たな雇用・訓練パッケージについて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000204414_00011.html
(宮武貴美)