人材確保策としてテレワークの重要性が増してくるでしょう

 新型コロナの変異株の感染拡大を心配している大熊であった。


大熊社労士
 おはようございます!
服部社長服部社長
 おはようございます。それにしても大都市圏での新型コロナの感染拡大がすごいですね。特に大阪での死亡者数の増加が気になっています。私も若くないですから、感染してはいけないと、結構気にしていますよ。
大熊社労士
 そうですね。感染力も重症化率も高まっているとなると、職場での感染対策も更に重要性が増しますね。御社ではなにか対策を検討されていますか?
服部社長
 はい、事務系と営業系はテレワークを強化しようと考えています。もっとも大企業のように出勤を7割削減といったようなことは難しいですけれども。あと工場は時差出勤で少しでも通勤時の感染リスクを下げられればと思っています。
大熊社労士
 なるほど。こうした感染対策は社員の会社に対する信頼感にも関係しますので、社員のみなさんと議論しながら進めていきたいものですね。さて、いま服部社長からテレワークのお話が出ましたので、最新のアンケート調査からテレワークの状況について見ていきたいと思います。今回ご紹介するのは、2021年4月22日に日本生産性本部が公表した「第5回 働く人の意識調査」の結果です。そのテレワークに関するポイントをまとめると以下のようになります。

  1. テレワーク実施率は19.2%(2020年5月:31.5%)
  2. 大阪兵庫の実施率は18.4%、1都3県は30.7%
  3. 自宅での勤務で効率が上がったという回答は59.1%(2020年5月:33.8%)
  4. 自宅での勤務に満足しているという回答は75.7%(2020年5月:57.0%)
  5. コロナ禍収束後もテレワークを行いたいという回答は76.8%(2020年5月:62.7%)

宮田部長宮田部長
 これは面白い結果ですね。テレワーク実施率は大きく下がっている一方で、効率が上がったという回答が増えて、約6割になっています。
大熊社労士
 そうですね。多くの企業でペーパーレスの推進やWEB会議などのツールの整備、そして自宅の勤務環境の改善などを進めた結果と言えます。ただ、注意が必要なのは、テレワーク実施率の低下で回答数が319件から181件に減少していることです。福島さん、分かりますか?
福島照美福島さん
 う~ん、あっ!そうか。最初の緊急事態宣言の際、多くの企業では仕事の見直しを行うことができないまま、テレワークを導入することになりました。その結果、業務の生産性低下が問題になって、緊急事態宣言終了後に、テレワークを中止した企業が多く出て、このような実施率の低下に繋がっています。つまり、この効率が上がったという回答は、様々な改善によって上がったということもあると思いますが、生産性が低い企業がテレワークを中止したことで、結果的に率が引きあがったという可能性もあるということですね!
大熊社労士
 さすがですね。私はそのような要因も大きいのではないかなと思っています。もっとも改善を続け、テレワークという新しい働き方の選択肢が確立された会社も少なくないと思います。そうした企業は様々な面でアドバンテージを得たのではないでしょうか?
福島さん
 テレワークを実施している企業の従業員の満足度は大きく高まって、75.7%にもなっています。そして、コロナ禍収束後も76.8%がテレワークを行いたいという回答をしています。こうした人材は、転職する場合、テレワークが認められていない企業を回避することになりそうですね。これを人材採用側から見ると、テレワークを実施していない場合には人材採用という点で不利になる可能性が高まるということになりますね。
大熊社労士大熊社労士
 そうなのです。今日お伝えしたかったのはその点なのです。新型コロナの感染拡大によって、テレワークなどの柔軟な働き方が増加しました。それがこうしたアンケート結果にも反映している訳ですが、実はこれだけでもないと感じています。テレワークで仕事ができると感じたことにより、単身赴任など転勤の必要性について疑問を持つ方が増えています。また兼業・副業への関心が高まっています。
服部社長
 なるほど。従来の「会社に来るのが当たり前」、「会社の辞令1枚で全国どこへでも転勤、「兼業・副業は禁止」といった従来の常識が崩れてきているということですね。
大熊社労士
 はい、そう思います。よってテレワークの導入というのは、単なる感染予防策ということではなく、企業の人事労務管理を変え、人材採用力にも大きな影響を与える重要テーマになってきていると感じています。
服部社長
 確かにそうですね。初夏以降、ワクチンの接種が増加することで、諸外国のように世間の雰囲気も変わっていくと予想しています。すると再び、人材採用難の問題が大きくなるのではないかと考えています。
大熊社労士
 労働力人口自体が減少していますから、それは間違いないでしょうね。その時代に備え、人材採用力を高めるという意味からも、柔軟な働き方の確保を真剣に検討していかなければならないのではないでしょうか?
服部社長
 そう思います。引き続き、検討をしていきたいので、大熊さん、協力をよろしくお願いしますね。
大熊社労士
 承知しました。

>>>to be continued

大熊社労士のワンポイントアドバイス[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
 こんにちは、大熊です。ここ数年、働き方改革が進められ、様々な法改正等が行われてきましたが、新型コロナによる社会の変化は働き方改革を急速に進める結果となっています。改めて働き方改革実行計画を見てみると、労働時間の上限規制や同一労働同一賃金だけでなく、テレワークや兼業・副業の推進などの項目も盛り込まれています。数年前の時点ではそれらが実現されるかは不透明な状況でしたが、気づけば雰囲気は大きく変わっています。この変化はまだ始まったばかりであり、労働者の意識の変化と共に、更なる変化に繋がることでしょう。企業としては安定的な人材の確保のためにも、こうした新しい環境に適応した仕組み作りが求められます。


参考リンク
日本生産性本部「第5回 働く人の意識調査(2021年4月22日)」
https://www.jpc-net.jp/research/detail/005218.html

(大津章敬)