在留資格取消事例からみる外国人採用における注意点
法務省 出入国在留管理庁は、令和3年5月21日、令和2年の「在留資格取消件数」の取りまとめ結果を公開しました。
令和2年に出入国管理及び難民認定法に基づき、在留資格取消がされたのは、1,210件で、前年に比べ217件(21.9%)増加となり過去最高となっています。
在留資格別では、「技能実習」が561件(46.4%)と最も多く、次いで、「留学」が524件(43.3%)と、この2つで約9割を占めており、在留資格取消の焦点は「技術・人文知識・国際業務」などの高度専門職ではなく、技能実習と留学であることがわかります。
国籍・地域別にみると,ベトナムが711件(58.8%)と最も多く、2位の中国(統計上、台湾・香港等は含まれていない)が162件(13.4%)であり、ベトナムが圧倒的に多いことがわかります。これは、近年、ベトナムからの労働者の増加もトップであり、人数増加に相関している部分があるとみられます。
取消事由別にみると、第5号(在留資格外の活動を行う)が616件(50.9%)と最も多く、次いで、第6号(在留資格での活動を3ヶ月していない)が493件(40.7%)とこの2つが多くなっています。
取消の具体例をみますと、外国人を採用するうえでの注意点がみえてくる部分がありますので、ご紹介します。
□取消の具体例
・「日本人の配偶者等」の在留資格を得るために、日本人との婚姻を偽装した。
・「日本人の配偶者等」の在留資格の者が離婚後もそのままの在留資格で在留していた。
・「家族滞在」の在留資格で扶養者の勤務先等について虚偽記載した。
・「留学」の在留資格の者が学校を除籍されたにもかかわらず、そのままの在留資格でアルバイトをしていた。
・「技能実習」の在留資格の者が実習先から失踪し、他社で就業していた。
上記からみえてくるのは、このようなトラブルに巻き込まれないためには、採用段階で十分に実態確認をされておくことが重要であり、完全ではないとしても一定程度の予防ができるのではないかと考えます。例えば、以下のような確認をされることが考えられるかもしれません。
□採用段階におけるトラブル回避の対応例
・「日本人の配偶者等」「家族滞在」の在留資格である場合は、戸籍や住民票などで婚姻の事実(最新状況として、離婚していないか)を確認する。配偶者の実態確認のため、電話などで挨拶させてもらう。
・「留学」の在留資格の場合は、学校へ連絡を入れ、在籍状況、出席実態を確認する。
・「技能実習」の在留資格の場合は、前職の会社で在籍のままとなっていないか、トラブルになっていないか、状況確認をする。
要らぬトラブルに巻き込まれないよう、予防策が講じられるところは実施しておきたいところです。
<参考法令>
出入国管理及び難民認定法
(在留資格の取消し)
第二十二条の四
五 別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者が、当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動を行つておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留していること(正当な理由がある場合を除く。)。
六 別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者が、当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動を継続して三月(高度専門職の在留資格(別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄第二号に係るものに限る。)をもつて在留する者にあつては、六月)以上行わないで在留していること(当該活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除く。)。
<参考リンク>
法務省 出入国在留管理庁「令和2年の「在留資格取消件数」について」
http://www.moj.go.jp/isa/publications/press/nyuukokukanri10_00002.html