健康保険の扶養の判断における医療職のワクチン接種業務に係る収入の特例
新型コロナウイルス感染症のワクチン接種は、毎日のように各種メディアで報道されていますが、その中には接種を受ける人の問題や、打ち手の人をはじめとした医療職の人出不足の問題もあります。打ち手を確保するためには、潜在看護師の活用といったことが盛んに言われています。これに関連し、健康保険の扶養の範囲内で働く医療職に対する健康保険の被扶養者の特例の取扱いが、通達として発出されました。
その具体的な内容は以下のとおりであり、被扶養者の収入がワクチン接種業務で増えたことにより、被扶養者として認定される額以上になるような場合であっても、収入確認の際の収入には算定しないというものです。
1.特例の趣旨等
各保険者が、被扶養者認定及び被扶養者の資格確認の際に、被扶養者の収入を確認するに当たっては、被扶養者の過去の収入、現時点の収入又は将来の収入の見込みなどから、今後1年間の収入を見込むものとしている。
本年の新型コロナウイルスワクチン接種業務については、例年にない対応として、期間限定的に行われるものであり、また、特にワクチン接種業務に従事する医療職の確保が喫緊の課題となっているという特別の事情を踏まえ、医療職がワクチン接種業務に従事したことによる給与収入については、収入確認の際には収入に算定しないこととされたい。
2.特例の具体的な取扱い
(1)対象者
本特例措置の対象者は、ワクチン接種業務に従事する医療職(医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士及び救急救命士)とする。
(2)対象となる収入
本特例措置の対象となる収入は、高齢者向けのワクチン接種が始まった令和3年4月からワクチン接種の実施期間である令和4年2月末までのワクチン接種業務に対する賃金とする。
また、各保険者においては、被扶養者認定及び被扶養者の資格確認において対象者の収入を確認する際、被保険者から、ワクチン接種業務を行う事業者・雇用主(市(区)町村、医療機関等)から発行された、ワクチン接種業務に従事したこと及びワクチン接種業務による収入額を証する書類の添付を求めることとする。なお、今般のワクチン接種の緊要性に鑑み、各保険者の判断により、当該書類の添付を不要とする取扱いとしても差し支えない。
この内容に関し、Q&Aも公開されており、その中には、この特例が健康保険等の被扶養者認定及び国民年金の第3号被保険者の認定のみに係る取扱いであり、税や会社の扶養手当(家族手当)の計算においては対象にならないことが明記されています。従業員の家族(被扶養者)が医療職としてワクチン接種業務を行うこともあるかと思いますので、通達やQ&Aを確認しておくとよいでしょう
参考リンク
法令等データベースサービス「新型コロナウイルスワクチン接種業務に従事する医療職の
被扶養者の収入確認の特例について(令和3年6月4日 保保発0604第1号)」
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210607S0020.pdf
法令等データベースサービス「新型コロナウイルスワクチン接種業務に従事する医療職の
被扶養者の収入確認の特例に関するQ&Aについて」
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210607S0030.pdf
(宮武貴美)