骨太の方針2021原案に見る今年度の最低賃金引上げの方向性

 今週水曜日(2021年6月9日)に開催された令和3年第8回経済財政諮問会議において、いわゆる「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針2021)」の原案が示されました。本日はこの中から、最低賃金の引き上げを含む「賃上げを通じた経済の底上げ」という箇所を引用し、ご紹介しましょう。

  • 民需主導で早期の経済回復を図るため、賃上げの原資となる企業の付加価値創出力の強化、雇用増や賃上げなど所得拡大を促す税制措置等により、賃上げの流れの継続に取り組む。
  • 我が国の労働分配率は長年にわたり低下傾向にあり、さらに感染症の影響で賃金格差が広がる中で、格差是正には最低賃金の引き上げが不可欠である。雇用維持との両立を図りながら賃上げしやすい環境を整備するため、生産性向上等に取り組む中小企業への支援強化、下請取引の適正化、金融支援等に一層取り組みつつ、最低賃金について、感染症下でも最低賃金を引き上げてきた諸外国の取組も参考にして、感染症拡大前に我が国で引き上げてきた実績を踏まえて、地域間格差にも配慮しながら、より早期に全国加重平均1,000 円とすることを目指し、本年の引上げに取り組む。
  • また、本年4月に中小企業へ適用が拡大した「同一労働同一賃金」に基づき、非正規雇用の処遇改善を推進するとともに、非正規雇用の正規化を支援する。

 最低賃金については、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)において、 「年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていく。これにより、全国加重平均が1,000円になることを目指す」という方針が打ち出されていますが、昨年度は「令和2年度地域別最低賃金額については、新型コロナウイルス感染症拡大による現下の経済・雇用への影響等を踏まえ、引上げ額の目安を示すことは困難であり、現行水準を維持することが適当」という異例の展開となり、最低賃金の引き上げは最大でも3円と非常に少額に抑制されました。しかし、今年度は新型コロナからの消費拡大への期待も大きいことから、当初方針に近い大幅の引き上げも予想されるのではないでしょうか。

 今後も最低賃金の検討状況について注視していくことにしましょう。


関連記事
2020年9月9日「2020年度の地域別最低賃金が正式に決定されました」
https://roumu.com/archives/104288.html

参考リンク
内閣府「令和3年第8回経済財政諮問会議」
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2021/0609/agenda.html
厚生労働省「令和2年度地域別最低賃金額改定の目安について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_12604.html

(大津章敬)