企業の組織・人事領域における課題は「管理職層のマネジメント能力」「人事制度見直し」などが上位に

 私が毎年、楽しみにしている調査の一つが、日本能率協会の「当面する企業経営課題に関する調査」です。これは同協会の法人会員ならびに評議員会社、およびサンプル抽出した全国主要企業の経営者(計5,000社)を対象に実施されている経営課題に関する調査。この2021年度(第42回)の結果が公表されましたので取り上げたいと思います。

 まずは「現在」の企業経営課題の上位は以下のようになっています。
収益性向上 40.8%←45.1%
人材の強化(採用・育成・多様化への対応) 37.7%←31.8%
売り上げ・シェア拡大 35.2%←30.8%

 このように、人材の強化(採用・育成・多様化への対応) 、売り上げ・シェア拡大が大きく数値を伸ばしています。また、「デジタル技術の活用・戦略的投資」もDXの流れを受け、19.3%←15.4%←8.5%と急速に課題として大きくなっていることが分かります。

 一方、組織・人事領域における課題に絞ると、上位4項目が大接近するという結果となっています。
管理職層(ミドル)のマネジメント能力向上 34.2%←32.9%
人事・評価・処遇制度の見直し・定着 33.8%←29.5%
次世代経営層の発掘・育成 33.3%←28.4%
組織風土(カルチャー)改革、意識改革 33.3%←32.3%

 いずれも回答を伸ばしていますが、中でも「人事・評価・処遇制度の見直し・定着」は2年連続急速に回答が伸びており、労働時間削減に止まらない「働き方改革」が進展していることが伺われます。一方、新型コロナの対策で昨年急増した「多様な働き方の導入(テレワークなど)」については、26.5%から 9.7%へと大幅に減少しています。テレワークに関しては、BCPとしてのテレワークについては一巡したと思われますが、それを定着させ、イノベーションを起こすというレベルにはまだまだ到達していませんので、引き続きの工夫が求められますし、また副業・兼業や選択制週休3日制などへの関心も高まっており、今後、重要性が高まってくることが予想されます。

 いずれにしても、人口オーナス期に入った我が国においては、人材の安定的な採用・定着・育成、そして生産性向上は最優先の経営課題であることは間違いありません。継続的に課題把握と対応を進め、人事労務管理でアドバンテージを得ることができるようにしていきましょう。


参考リンク
日本能率協会「2021年度(第42回)当面する企業経営課題に関する調査」
https://jma-news.com/archives/4955

(大津章敬)