2024年4月施行に向けて示された医師の時間外労働の上限時間等

 医師の時間外労働の上限は、2017年3月の働き方改革実現会議において「改正法の施行期日の5年後を目途に規制を適用することとし、医療界の参加の下で検討の場を設け、質の高い新たな医療と医療現場の新たな働き方の実現を目指し、2年後を目途に規制の具体的な在り方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得る」こととされました。実際に、時間外労働の上限規制の適用を2024年4月1日まで猶予した上で、医療界、労働組合、労働法学者の参画を得て開催する検討会において検討が行われてきました。今回、この検討の結果として、以下の内容となる労働基準法施行規則の一部を改正する省令の改正案がパブリックコメントとして出されています。

1.改正内容が適用される範囲
 医師の時間外労働について、以下の3つの水準に分け、それぞれの水準ごとに異なる上限等を適用し、今回の労働基準法施行規則の改正案はA水準に係る医師について定める。
①A水準
一般的な医業に従事する医師の時間外労働の上限水準
②B水準・連携B水準
地域医療提供体制の確保の観点からやむを得ずA水準を超えざるを得ない場合の水準
③C-1水準・C-2水準
一定の期間集中的に技能向上のための診療を必要とする医師向けの水準

2.A水準における時間外労働の上限
 案として示されるA水準における医師の時間外労働の上限は以下の通りです。
・36協定に定めることができる通常の時間外労働の上限時間を、一般の労働者と同じく、1ヶ月について45時間、1年について360時間とする。
・36協定に定めることができる臨時的な必要がある場合の時間外・休日労働の上限時間を、1ヶ月について100時間未満かつ1年について960時間とする。ただし、時間外・休日労働が1ヶ月について100時間以上となることが見込まれる者については、36協定に面接指導を行うこと等を定めた場合には1年について960時間とする。
・36協定で定めるところによって時間外・休日労働を行わせる場合であっても超えることのできない上限時間を、1ヶ月について100時間未満かつ1年について960時間とする。ただし、時間外・休日労働が1ヶ月について100時間以上となることが見込まれる者については、面接指導を行う等の措置を講じた場合には1年について960時間とする。
・一般労働者について一定の時間を超えて労働させる場合に求められている健康福祉確保措置に加えて、厚生労働大臣が定める要件に該当する面接指導を行うこと等を36協定に定めることとする。

 2022年1月中旬に公布され、2024年4月1日に施行される予定になっています。


参考リンク
パブリックコメント「労働基準法施行規則の一部を改正する省令案、医療法第百二十八条の規定により読み替えて適用する労働基準法第百四十一条第二項の厚生労働省令で定める時間等を定める省令案及び労働基準法施行規則第六十九条の三第二項第二号の規定に基づき厚生労働大臣が定める要件(案)に関する御意見の募集について」
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495210254&Mode=0
(宮武貴美)