厚労省が示す研修・教育訓練等に関する労働時間の考え方

 企業は、従業員に対し業務に関する教育訓練や、キャリア開発に向けた研修の実施等を行うことがあります。このような研修・教育訓練をはじめとして、労働時間に含めるものであるか判断に迷う事例も少なくありません。厚生労働省はこのように迷いやすい事例をリーフレットにまとめ、公開しています。そのうち、基本的な考え方の整理は以下のとおりです。

1.労働時間の定義
・労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいう。
使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は、労働時間に該当する。

2.研修・教育訓練の取扱い
・研修・教育訓練について、業務上義務づけられていない自由参加のものであれば、その研修・教育訓練の時間は、労働時間に該当しない
・研修・教育訓練への不参加について、就業規則で減給処分の対象とされていたり、不参加によって業務を行うことができなかったりするなど、事実上参加を強制されている場合には、研修・教育訓練であっても労働時間に該当する

3.仮眠・待機時間の取扱い
・仮眠室などにおける仮眠の時間について、電話等に対応する必要はなく、実際に業務を行うこともないような場合には、労働時間に該当しない。

4.労働時間の前後の時間の取扱い
・更衣時間について、制服や作業着の着用が任意であったり、自宅からの着用を認めているような場合には、労働時間に該当しない。
・交通混雑の回避や会社の専用駐車場の駐車スペースの確保等の理由で労働者が自発的に始業時刻より前に会社に到着し、始業時刻までの間、業務に従事しておらず、業務の指示も受けていないような場合には、労働時間に該当しない。

5.直行直帰・出張に伴う移動時間の取扱い
・移動中に業務の指示を受けず、業務に従事することもなく、移動手段の指示も受けず、自由な利用が保障されているような場合には、労働時間に該当しない

 このように示されているものの、実際は個別の事案によって判断が分かれるものでもあります。近年は働き方改革等により従業員の労働時間に対する意識も高まっていますので、より慎重な判断が求められます。


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2019年10月17日「労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い」
https://roumu.com/archives/99022.html
参考リンク
厚生労働省「「働き方改革」の実現に向けて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html
(宮武貴美)