重要性を増す「ビジネスと人権」への対応、経団連は実務ハンドブックを策定
ビジネスと人権というテーマが注目を集めています。そもそもは2011年、国連人権理事会において「ビジネスと人権に関する指導原則」が全会一致で支持され、「人権を保護する国家の義務」と「人権を尊重する企業の責任」が整理されたことに起因しますが、日本政府でも2020年10月にNAP(指導原則に基づく国別行動計画)を公表し、企業に対して、国際的に認められた人権を尊重するとともに、人権デュー・ディリジェンスに関するプロセスを導入することへの期待を明確化しました。
最近では、国際的に人権侵害が疑われる製品や個人を規制する動きが強まっていることから、企業でも自らの事業活動に関連して人権を侵害しないことが求められ、人権に負の影響を与える可能性(人権リスク)を特定、防止、軽減、対処し、説明するために、人権デュー・ディリジェンスを実施することが求められます。特に上場企業、もしくは上場企業と取引を行う企業ではその必要性が高く、その対応が求められているところです。
そんな中、経団連では「人権を尊重する経営のためのハンドブック」を策定しました。このハンドブックは、担当役員や実務担当者向けを想定し、企業等における取組事例などを含む、具体的な情報がまとめられています。実務的には以下の対応が求められています。
- 国際的に認められた人権を理解、尊重し、企業としての責任を果たす。
- 人権を尊重する方針を策定し、社内外にコミットメントを表明する。
- 事業の性質ならびに人権への負の影響リスクの重大性に応じて、人権デュー・ディリジェンスを適切に実施する。
- 人権侵害の発生を未然に防止し、万一発生した場合には、速やかにその是正に努める。
- 多様なステークホルダーと連携し、人権侵害を受けやすい社会的に立場の弱い人の自立支援を通じて、包摂的な社会づくりに貢献する。
今年は、「ビジネスと人権」というテーマの重要性が更に高まると思われますので、このハンドブックも参考にしながら、方針の策定や人権デュー・ディリジェンスなどを進めていきましょう。
参考リンク
経団連「企業行動憲章 実行の手引き「第4章 人権の尊重」の改訂 および「人権を尊重する経営のためのハンドブック」の策定」
https://www.keidanren.or.jp/policy/2021/115.html
経団連「人権を尊重する経営のためのハンドブック」
https://www.keidanren.or.jp/policy/cgcb/2021handbook.pdf
(大津章敬)