テレワークで進む「転職なき地方移住」、企業として求められる対応

 テレワークの普及で地方移住が話題になることがあります。その現状と企業として求められる課題を考えるため、本日は、パーソル総合研究所の「地方移住に関する実態調査(2022/3/22)」の内容をご紹介したいと思います。

 移住と言えば、地方に仕事がないなどで躊躇するという話が昔から多く聞かれますが、いまの移住は状況が様変わりしたようです。なんと移住に伴って転職をしていないという回答が53.4%にもなっています。その内訳は以下の通りです。
47.3% 転職していない(仕事内容は変わらず)
6.2% 転職していない(仕事内容は大きく変化)
15.0% 転職した(仕事内容は同様)
28.4% 転職した(仕事内容が大きく変化)
0.5% 独立・起業(農林水産業)
2.6% 独立・起業(フリーランス含むその他)

 そして、その収入も58.6%が「変化なし」としており、むしろ20代の25.8%、30代の22.2%では増収という回答になっています。逆に50代以上では減収の割合が高くなっていますが、テレワークの普及で移住の形が大きく変わっていることが分かります。

 一方、地方圏への移住を検討している人(2,998人)を対象にした調査を見ると、51.3%が「不安があり踏み切れない」と回答していますが、その移住検討段階の割合は以下のようになっています。
5年以内で計画 478人(16%)
10年以内で計画 361人(12%)
時期未定 2,159人(72%)

 この判断に影響を与えているのが、職場の在宅勤務環境の有無です。先ほどの「5年以内で計画」と回答した人のうちの54.6%、「10年以内で計画」の52.4%が在宅勤務が可能と回答しています。これに対して、「時期未定」は43.5%となっており、在宅勤務が可能な場合により具体的な移住検討がなされていることが分かります。

 テレワークが広く普及して、まだ2年。しかし、この2年間で従業員の意識や生活スタイルには大きな変化が見られています。今後、テレワークでも成果を出すことができる優秀な人材であればあるほど、テレワークを活用した地方移住を検討する可能性が高くなっていくことでしょう。企業として、そうした人材の定着を図るためには、テレワークを前提とした業務設計が求められます。またそうした企業であれば、日常的に通勤が難しい人材の採用も可能となり、今後の人材獲得競争においても有利な状況になるのではないでしょうか。


参考リンク
パーソル総合研究所「地方移住に関する実態調査(2022/3/22)」
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/migration-to-rural-areas.html

(大津章敬)