全世代型社会保障構築会議「議論の中間整理」にみる今後の政策の方向性

 昨日(2022年5月17日)、政府の全世代型社会保障構築会議は議論の中間整理を公表しました。今後の社会保障制度に大きな影響を与える内容ですので、そこで述べられている各テーマの「今後の取組」について見てみましょう。
1.全世代型社会保障の構築に向けて

  • 短期的及び中長期的な課題について、「時間軸」を持って、計画的に取り組む。「地域軸」も意識。
  •  給付は高齢者中心、負担は現役世代中心という構造を見直し、能力に応じて皆が支え合い、人生のステージに応じて必要な保障を確保することが基本。
  •  世代間対立に陥ることなく、国民的な議論を進めながら対策を進めていくことが重要。

2.男女が希望どおり働ける社会づくり・子育て支援

  •  改正育児・介護休業法による男性育休の推進、労働者への個別周知・意向確認のほか、保育サービス整備などの取組を着実に推進。
  • 子育て・若者世代が不安を抱くことなく、仕事と子育てを両立できる環境整備のため更なる対応策について、国民的な議論を進めていく。
  • こども家庭庁の創設を含め、子どもが健やかに成長できる社会に向け、子ども・子育て支援の強化を検討。

3.勤労者皆保険の実現・女性就労の制約となっている制度の見直し

  • 令和2年年金制度改正法に基づき、被用者保険の適用拡大を着実に実施。さらに、企業規模要件の撤廃も含めた見直しや非適用業種の見直し等を検討。
  • フリーランスなどについて、被用者性等をどう捉えるかを検討。その上で、より幅広い社会保険の適用の在り方について総合的に検討。
  • 女性就労の制約となっていると指摘されている社会保障や税制、企業の諸手当などについて働き方に中立的なものにしていく。

4.家庭における介護の負担軽減

  • 圏域ごとの介護ニーズを踏まえたサービスの基盤整備、在宅高齢者について地域全体での基盤整備。
  • 介護休業制度の一層の周知を行うことを含め、男女ともに介護離職を防ぐための対応。
  • 認知症に関する総合的な施策を更に推進。要介護者及び家族介護者等への伴走型支援などの議論を進める。ヤングケアラーの実態を把握し、効果的な支援策を講じる。

5.「地域共生社会」づくり

  • ソーシャルワーカーによる相談支援、多機関連携による総合的な支援体制。分野横断的な取組を進める。
  • 住民に身近な地域資源を活用しながら、地域課題の解決のために住民同士が助け合う「互助」を強化。
  • 住まい確保の支援のみならず、地域とつながる居住環境や見守り・相談支援の提供も含め検討。その際には、空き地・空家の活用やまちづくりなどの視点も必要。

6.医療・介護・福祉サービス

  • 「地域完結型」の提供体制の構築に向け、地域医療構想の推進、地域医療連携推進法人の活用、地域包括ケアシステムの整備などを、都道府県のガバナンス強化など関連する医療保険制度等の改革と併せて着実に推進。
  • かかりつけ医機能が発揮される制度整備を含め、機能分化と連携を一層重視した医療・介護提供体制等の改革を推進。
  • 地域医療構想について、第8次医療計画策定とあわせて議論を進める。さらに2040年に向けバージョンアップ。
  • データ活用の環境整備を進め、個人・患者の視点に立ったデータ管理を議論。社会保障全体のDXを進める。
  • ICTの活用、費用の見える化、タスクシェア・タスクシフティングや経営の大規模化・協働化を推進。

 政府では、この中間整理を踏まえて、具体的な改革事項を工程化すべく、動くとしています。


参考リンク
内閣官房「全世代型社会保障構築会議(第5回)・全世代型社会保障構築本部(第2回)議事次第」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/zensedai_hosyo/dai5/gijisidai.html

(大津章敬)