規制改革推進に関する答申2022(案)に見る労働分野の改革提言内容

 近年の働き方改革等の動きでは、規制改革推進会議の影響が大きくなっています。そこで本日は、規制改革推進会議が2022年5月27日に示した「規制改革推進に関する答申(案)」の中から、人事労務管理に影響が大きい項目を見ていきましょう。
(1)労働時間制度(特に裁量労働制)の見直し
【令和4年度中に検討・結論、結論を得次第速やかに措置】
 厚生労働省は、働き手がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる環境整備を促進するため、「これからの労働時間制度に関する検討会」における議論を加速し、令和4年度中に一定の結論を得る。その際、裁量労働制については、健康・福祉確保措置や労使コミュニケーションの在り方等を含めた検討を行うとともに、労働者の柔軟な働き方や健康確保の観点を含め、裁量労働制を含む労働時間制度全体が制度の趣旨に沿って労使双方にとって有益な制度となるよう十分留意して検討を進める。同検討会における結論を踏まえ、裁量労働制を含む労働時間制度の見直しに関し、必要な措置を講ずる。
【令和4年度検討開始】
 厚生労働省は、労働基準法上の労使協定等に関わる届出等の手続について、労使慣行の変化や社会保険手続を含めた政府全体の電子申請の状況も注視しつつ、「本社一括届出」の対象手続の拡大等、より企業の利便性を高める方策を検討し、必要な措置を講ずる。

(2)既存の各種制度の活用・拡充
【令和4年度検討開始、結論を得次第速やかに措置】
 厚生労働省は、労働者のキャリア形成に向けた自律的・主体的な活動を支援する観点も踏まえ、テレワークや副業・兼業、既存の労働時間制度、教育訓練休暇制度、選択的週休3日制度の活用促進のため、好事例を周知するとともに、これらの制度を活用している企業が求職者等に分かりやすく示される方策を検討し、必要な措置を講ずる。

(3)職務等に関する労働契約関係の明確化
【令和4年度中に検討、結論を得次第速やかに措置】
 厚生労働省は、「多様化する労働契約のルールに関する検討会」の報告書を踏まえ、労働政策審議会においては、職務や勤務地を限定するなど多様な働き方を取り入れる企業が出てきているといった雇用をめぐる状況の変化も視野に入れ、個人の自律的なキャリア形成に資する予見可能性の向上等の観点から、労使双方にとって望ましい形で労働契約関係の明確化が図られるよう検討を行い、必要な措置を講ずる。

 これらの中で、目新しいのは(3)でしょう。これは、厚生労働省の「多様化する労働契約のルールに関する検討会 報告書」でも述べられていますが、予見可能性の向上等の観点から、多様な正社員に限らず労働者全般について、労働基準法15条明示の対象に就業場所・業務の変更の範囲を追加するといったことが議論されています。この内容は、【令和4年度中に検討、結論を得次第速やかに措置】とされていますので、早ければ来年度にも法改正が行われるのかも知れません。

 フェーズ1の働き方改革が終了し、大きな法改正は少なくなっていますが、今後も細かい改正は続くことになりそうです。


参考リンク
内閣府「第13回規制改革推進会議 令和4年5月27日(金)」
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/committee/220527/agenda.html
規制改革推進会議「規制改革推進に関する答申(案)」
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/committee/220527/220527general_01.pdf
厚生労働省「多様化する労働契約のルールに関する検討会 報告書」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24904.html

(大津章敬)