国際的に低水準にある我が国企業の能力開発費、コロナで更に低下

 深刻な人材難の中、既存人材のレベルアップが重要となっており、社員の能力開発に向けた取り組みが強化されているかと思いきや、実際にはそのような状態にはなっていないようです。本日は厚生労働省「令和3年度「能力開発基本調査」の結果から、企業の教育訓練への支出の状況について見てみたいと思います。

 企業の教育訓練への費用の支出状況をみると、OFF-JTまたは自己啓発支援に支出した企業は 50.5%となっています。内訳をみると、OFF-JTと自己啓発支援の両方に支出した企業は19.7%、OFF-JTにのみ費用を支出した企業は25.9%、自己啓発支援にのみ支出した企業は 4.9%であり、一方、どちらにも支出していない企業は49.0%となっています。

 OFF-JTに費用を支出した企業(画像)については45.9%と、コロナ以降、特に低下しています。また、自己啓発支援に費用を支出した企業割合も24.6%と、前回(24.8%)と同水準となっており、3年移動平均でみると、近年は低下しています。

 一方、OFF-JTに支出した費用の労働者一人当たり平均額を見ると、1.2万円であり、こちらも近年は減少傾向にあります。

 厚生労働省の「平成30年版 労働経済の分析」によれば、我が国のGDPに占める企業の能力開発費の割合は先進諸国の中で特に低くなっていますが、それが更に低下するという非常に深刻な状況となっています。一人ひとりの人材の能力向上と再配置が重要な課題になっており、この状況の改善が不可欠です。


参考リンク
厚生労働省「令和3年度「能力開発基本調査」の結果を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00105.html
厚生労働省「平成30年版 労働経済の分析 -働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について」
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/18/backdata/2-1-13.html

(大津章敬)