障害者の合理的配慮の提供を行う際に活用できる事例集
障害者雇用を如何に進めるかは多くの企業において重要の課題となっています。そんな取り組みの際に活用できる資料が厚生労働省から公開されました。本日はその紹介を行いたいと思います。
今回公表された「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績(令和3年度)」(以下、「相談等実績」という)をみてみると、公共職業安定所に寄せられた障害者差別および合理的配慮の提供に関する相談は244件と、前年度に比べわずかに減少しましたが、このうち合理的配慮の提供に関する相談は189件と、前年度に比べ6.8%増加しています。
また、相談等実績の中で、合理的配慮の提供に関する相談に対する対応事例が紹介されており、ハローワークの助言等により対応が図られた事例として以下の内容が紹介されています。
【合理的配慮の提供に関する助言事例】(発達障害)
音や匂いに敏感という障害特性があるため、在宅勤務等の静かな環境での就業を求めたにもかかわらず、職場からの配慮が実施されず、説明もない。
⇒ハローワークによる事業所への聴取の結果、本人が求める合理的配慮の一部は措置困難であったが、それについて本人に伝えていないなど、本人との間での話合いがなされていないことが確認されたことから、過重な負担となる措置や提供可能な措置を整理した上で、本人に説明するよう助言した。事業所は本人との話合いを通じ、就業時間や業務内容への配慮を実施した。
【合理的配慮の提供に関する助言事例】(精神障害)
障害を開示し、季節等により体調を崩しやすいことを伝えていたにもかかわらず、体調不良で休暇を取ると、退職勧奨を受けた。
⇒ハローワークによる事業所への聴取の結果、相談内容は事実であり、合理的配慮が欠けていたことや障害に対する理解が不足していたことが確認されたことから、事業所に対し、今後、障害者雇用を行う際に合理的配慮の提供を行うよう助言した。
合理的配慮の提供については、合理的配慮指針事例集が出されています。これは全国の都道府県労働局・ハローワーク、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構等を通じて、事業主が実際に取り組んでいる事例を収集したものです。障害類型別に募集及び採用時の事例と採用後の事例が紹介されていますので、今後、採用を行う際や労務管理を行う際に参考になるでしょう。
■合理的配慮指針事例集はこちら
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000898163.pdf
参考リンク
厚生労働省「「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績(令和3年度)」を公表しました」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26346.html
(大津章敬)