本格化する兼業・副業 その内容はより本業に近いものにシフト

 労働者・企業ともに兼業・副業に関する関心が高まっています。私も企業の人事労務管理に関するご相談に対応する中、最近はこのテーマに関する相談の増加を実感していますし、また制度設計を行うことも多くなってきました。そんな制度検討の際に有効に活用できるデータがリクルートから公表されました。「兼業・副業」をテーマに、働く個人(正社員)および企業の人事担当者を対象とした調査結果をまとめたものですが、今回は労働者側の調査結果のポイントを紹介します。
(1)兼業・副業の実施状況
 兼業・副業を実施中と実施意向ありを合計すると55.9%となり、過半数の労働者が兼業・副業に対して実施意向があるという結果となっています。一方、( )内は昨年度(2020年度)の結果となっていますが、昨年度と比較すると実施意向は若干ですが減少しています。これはコロナによる休業等が減少したことによる影響ではないかと考えられます。
 兼業・副業実施中 9.4%(9.8%)
 今後の実施意向あり/過去に兼業・副業経験あり 5.6%(5.2%)
 今後の実施意向あり/過去に兼業・副業経験なし 40.9%(41.8%)
 今後の実施意向なし/過去に兼業・副業経験あり 3.2%(3.0%)
 今後の実施意向なし/過去に兼業・副業経験なし 40.9%(40.3%)

(2)年代別で見た兼業・副業の実施状況
 以下は年代別の兼業・副業の実施意向(実施中+今後の実施以降あり)の割合ですが、年代によって大きく差があり、若手ではかなり意向が強いことが分かります。
 20歳~24歳 65.4%
 25歳~29歳 68.8%
 30歳~34歳 64.4%
 35歳~39歳 63.2%
 40歳~44歳 60.5%
 45歳~49歳 53.4%
 50歳~54歳 49.1%
 55歳~59歳 44.7%
 60歳以降   40.2%

(3)勤務先での兼業・副業を認める人事制度の有無
 勤務先での兼業・副業を認める人事制度があるとの回答は前年度の18.0%から19.1%に若干増加しています。
 兼業・副業制度がある 19.1%(18.0%)
 兼業・副業制度はない 56.3%(58.7%)
 わからない 24.5%(23.3%)

(4)兼業・副業の仕事内容と主たる職業との関係
 今回の労働者向け調査で大きく数値が変動しており、興味深いのが「兼業・副業の仕事内容と主たる職業との関係」です。前年度と比較すると「兼業・副業の内容は、主たる職業の仕事内容とまったく関係がない」という回答が大幅に減り、「兼業・副業の内容は、主たる職業の仕事内容と(非常に)よく関係している」が増加しています。前年度は、コロナによる休業等でまずは収入の確保を目的に兼業・副業を行っていたものが、自らのキャリアを活かした本格的な兼業・副業が増加し始めたと考えることができるでしょう。
 兼業・副業の内容は、主たる職業の仕事内容と非常によく関係している 24.5%(8.5%)
 兼業・副業の内容は、主たる職業の仕事内容とよく関係している 20.6%(11.5%)
 兼業・副業の内容は、主たる職業の仕事内容とあまり関係がない 16.6%(17.7%)
 兼業・副業の内容は、主たる職業の仕事内容とまったく関係がない 38.2%(62.4%)

 この調査では、これら以外にも非常に興味深い結果を見ることができます。兼業・副業制度の検討を行うに当たっては確実にチェックしておきたい資料となっています。また別の機会には人事担当者向けの調査結果も取り上げたいと思います。


参考リンク
リクルート「「兼業・副業に関する動向調査2021」データ集(2022/7/20)」
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2022/0720_11468.html

(大津章敬)