曖昧な指示に抵抗を感じる新入社員 8割を超える

 一般社団法人日本能率協会では、毎年恒例の新入社員の意識調査を実施し、その結果を公表しました。この調査は、同協会の新入社員向け公開教育セミナーの参加者を対象に今年4月、インターネット調査で実施されたもので、545人から回答を得ています。今回は、同調査の中から「仕事をしていく上での抵抗感」について尋ねた項目について、ピックアップしたいと思います。

 タイトルにもある通り、「上司や先輩からの指示があいまいでも質問しないでとりあえず作業を進める」ことに対し「抵抗がある」(「抵抗がある」+「どちらかと言えば抵抗がある」)と回答した新入社員の割合が年々上昇を続け、今回なんと82.7%に達したということです。

 かつて、日本企業はメンバーの同質性をもとにチームワークを高め、それを組織の競争力の源泉としていました。「職場での指示が最小限で済む」というコミュニケーションコストの低さが、組織の生産性を高めることに寄与していたのです。しかし、直近20年の日本では、身の回りの生活様式や日用品一つとっても、大きく様変わりしています。かつては「常識」と呼ばれたような、他人同士の共通認識の範囲が極端に狭まっており、いわゆる「阿吽の呼吸」は、特に若手世代の社員に対しては成立しづらくなっています。

 上司世代からは、丁寧に指示をすることに対して、「指示待ち人間を生んでしまうのではないか」「指示したことしかやらなくなってしまうのでは」という懸念の声も聞かれます。しかし、最小限の指示のもとで、上司の意図を正確に理解できないまま仕事を進めることで、結果として本来する必要のない「仕事の手戻り」が生じるだけに留まらず、ミスや事故が起こるリスクは、現在の上司が新入社員だった頃よりも、高まっていると言えるでしょう。また同時に、このようなミスの起こりやすいリスクの高い状況下で、新入社員側がストレスを感じていることも、上司や職場側は認識しておくべきだと考えられます。

 こうした職場を取り巻く環境において、さらには管理職の役割が膨らむ中、「曖昧な指示」への対策は「個人の問題」では済まされず、個人への支援と組織的取組の両方が必要であると言えるでしょう。職場ですぐに出来る取組みとしては、新入社員配属先の上司やOJTにおける指導担当、職場への支援などが考えられますが、組織の設計や人事制度の在り方など、特に職場でのコミュニケーションに影響を及ぼす可能性があるハード・ソフト両面の再設計に取り組んでいくべきタイミングが迫っているのかもしれません。


参考リンク
一般社団法人日本能率協会「2022年度 新入社員意識調査」(2022年9月12日)
https://jma-news.com/wp-content/uploads/2022/09/20220912_new_employees_2022.pdf

(菊地利永子)