人材確保のために全社員対象の賃上げを実施・検討する企業が79.0%

 人材確保が難しい時代になっており、企業も様々な対策を進めています。そこで今回は、東京商工会議所が「会員企業と学校法人との就職情報交換会」に
参加した企業278社を対象に実施した調査から、来春の新卒採用の充足率と人材確保・定着に向けた取り組みの内容についてみていきます。
(1)2023年新卒採用の計画人数に対する充足率

  • 計画以上の内々定者数を確保している企業は12.4%にとどまる。
  • 充足率が50%未満の企業が36.9%を占めており、内々定者がいない(0%)の企業が11.5%あるなど、企業が新卒採用に苦戦している。

(2)有為な人材の確保・定着に向けた取組[処遇面]

  • 若年者を含む有為な人材の確保・定着に向けた取組を尋ねたところ、直近3年間に実施した取組について、「初任給の引上げ」は47.5%に達している。
  • 「全社員を対象とした賃上げ」、「賞与、手当の引上げ」、「福利厚生の充実」についても3割強から5割強に達している。

(3)有為な人材の確保・定着に向けた取組[人材育成・環境面]

  • 直近3年間に実施した取組について、「人材育成・研修制度の充実」、「社員の自己啓発への支援強化」といった人材育成・能力開発に関する項目はいずれも7割前後に達している
  • 「オフィスや工場など職場の環境整備」も59.8%。

(4)有為な人材の確保・定着に向けた取組[労働環境面]

  • 直近3年間に実施した取組について、「年次有給休暇の取得促進」は80.4%、「時間外労働(残業)の削減」は73.5%。
  • 「出産・育児との両立支援の導入、推進」、「テレワークの導入、推進」や「柔軟な働き方の導入、推進」といった項目も5割から7割弱に達している。

 このように充足率が50%未満の企業が36.9%になるなど、多くの企業は新卒採用に苦戦しており、処遇の見直しなどを検討しています。来春の春闘では物価高などの環境変化を受け、大幅な賃上げの議論がなされることになりますが、企業においてはこの新たな環境における人事制度再構築の重要性が高まっています。


参考リンク
東京商工会議所「新卒者の採用・選考活動動向に関する調査について(2022年11月10日)」
https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1032391

(大津章敬)