厚労省から公表された今後の労働契約法制と労働時間法制のあり方に関する報告

 厚生労働省では、様々な政策の方向性について審議が行われていますが、昨日、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会労働条件分科会から、今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について、検討結果が取りまとめられた報告が公表されました。今後、この報告を踏まえ、法令改正等が行われる可能性が高いことから、主だった報告内容を確認します。

Ⅰ 労働契約法制
1 無期転換ルールについて
・無期転換申込権が発生する契約更新時に、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件について、労働基準法の労働条件明示の明示事項に追加することが適当である。
・この場合において、労働基準法の労働条件明示において書面で明示することとされているものは、無期転換後の労働条件明示にあたっても書面事項とすることが適当である。

2 労働契約関係の明確化について
・多様な正社員に限らず労働者全般について、労働基準法の労働条件明示事項に就業場所・業務の変更の範囲を追加することが適当である。
・労働基準法の労働条件明示のタイミングに、労働条件の変更時を追加することを引き続き検討することが適当である。

Ⅱ 労働時間法制
1 裁量労働制について
・銀行又は証券会社において、顧客に対し、合併、買収等に関する考案及び助言をする業務について専門型の対象とすることが適当である。
・専門型について、本人同意を得ることや同意をしなかった場合に不利益取扱いをしないこととすることが適当である。
本人同意を得る際に、使用者が労働者に対し制度概要等について説明することが適当であること等を示すことが適当である。
同意の撤回の手続を定めることとすることが適当である。また、同意を撤回した場合に不利益取扱いをしてはならないことを示すことや、撤回後の配置や処遇等についてあらかじめ定めることが望ましいことを示すことが適当である。
・ 健康・福祉確保措置の追加(勤務間インターバルの確保、深夜業の回数制限、労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の適用解除)、医師の面接指導)等を行うことが適当である。

2 年次有給休暇について
・令和7年までに「年次有給休暇の取得率を 70%以上とする」という政府の目標を踏まえ、年次有給休暇の取得率の向上に向け、好事例の収集・普及等の一層の取組を検討することが適当である。また、年5日以内とされている年次有給休暇の時間単位での取得について、年5日を超えて取得したいという労働者のニーズに応えるような各企業独自の取組を促すことが適当である。

3 今後の労働時間制度についての検討
・働き方改革関連法で導入又は改正された、時間外労働の上限規制、フレックスタイム制、高度プロフェッショナル制度、年次有給休暇制度等は、同法の施行5年後に、施行状況等を踏まえて検討を加え、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずることとされていることを踏まえ、今後、施行状況等を把握した上で、検討を加えることが適当である。

 実際に、どの項目がいつ変更されるのかは今のところ明記されていませんが、どの企業にも影響のあるような項目も含まれているため、注視が必要です。


参考リンク
厚生労働省「労働政策審議会労働条件分科会報告「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30073.html
(宮武貴美)