企業の役職定年制度運用状況 廃止・見直しの議論も増加

 近年、65歳への定年延長などの検討を行う中で、役職定年制の見直しについて議論を行う機会が増えています。役職定年制については運用上の悩みを抱えている人事担当者の方も多いと思います。そこで今回は、パーソル総合研究所の「管理職の異動配置に関する実態調査(2022年12月22日)」の中から、役職定年制の運用状況についての結果を見ていきたいと思います。なお、この調査は、各業界大手企業34社を対象に実施されたものとなっています。
(1)役職定年制度の有無
 以下のように役職定年制度を維持している企業は44%となっていますが、新設と廃止予定がともに13%あることを考えると、企業によって対応のバラツキが出ていることが分かります。
31% 役職定年制度あり(継続)
13% 役職定年制度あり(新設)
13% 役職定年制度あり(廃止予定)
16% 廃止
28% なし

(2)課長・部長の役職定年年齢
 役職定年の年齢は以下のように55~57歳が中心となっており、課長よりも部長の年齢を高めに設定している企業が一定数あることも分かります。
■課長
6% 50~54歳
69% 55~57歳
6% 58~59歳
13% 60歳
6% その他
■部長
0% 50~54歳
69% 55~57歳
19% 58~59歳
6% 60歳
6% その他
※「60歳」は、65歳定年延長の際に役職定年を「60歳」として新設した会社

(3)役職定年制度の運用状況
 役職定年制度を導入している企業でよく問題になるのが、役職定年年齢に到達しても例外として、役職を延長するという例外運用です。その例外としての役職定年延長の実施状況は以下のようになっています。後継者不足などの問題もあり、例外なしで運用できている企業は少数であるという実態が分かります。
31% ほぼ例外なし
23% 1割程度
15% 2~3割
8% 4~5割
23% 半数以上

 本来であればマネジメントができる人材を一律でポストオフするというのは必ずしも合理的な制度ではありません。しかし、次世代管理職の育成・登用を考えれば、一度就任した管理職がそのポストに止まり続ける仕組みも問題です。場合によっては役職定年ではなく、役職任期制などを採用し、その時々の組織運営において柔軟に役割を見直していくような制度運用を検討することも有効でしょう。


参考リンク
パーソル総合研究所「管理職の異動配置に関する実態調査(2022年12月22日)」
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/talent-management-of-major-companies3.html

(大津章敬)