人手不足企業の深刻化と人材確保のために実施される賃上げ
最近の人事労務関係の話題と言えば、人手不足と賃上げに尽きるでしょう。本日は、帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2023年1月)」からその関係について見ていきたいと思います。
まず人手不足の状態ですが、正社員の人手不足企業の割合は51.7%、非正社員では31.0%と高水準で推移しています。中でも「旅館・ホテル」は深刻な人手不足となっており、正社員で77.8%、非正規社員81.1%が不足と回答しており、今後需要の回復が見込まれる中で、その需要に対応できないケースが急増することが懸念されます。
このような雇用の状況を背景に、賃上げは人材の獲得や定着に向けて避けては通れない要素となっており、2023年度の見込みとしては全体の56.5%が賃上げ見込みであるのに対し、人手不足企業では63.1%と全体よりも高くなっています。これを従業員数区分で見ると以下のようになっています。
全体 56.5%(人手不足企業63.1%)
5人以下 39.6%(人手不足企業51.4%)
6~20人 61.1%(人手不足企業67.1%)
21~50人 63.3%(人手不足企業68.3%)
51~100人 62.7%(人手不足企業65.4%)
101~300人 57.0%(人手不足企業59.3%)
300人超 41.7%(人手不足企業46.4%)
十分な原資の確保ができない中、人員確保のために無理をして賃上げを行う企業が相当数出てくることは避けられない状態です。無理な雇用や賃上げを行うことでの労働トラブルや企業の資金繰り悪化などの問題が懸念されます。
参考リンク
帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2023年1月)」
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p230207.pdf
(大津章敬)