政府予算にみる厚労省が取り組む2023年度の重点ポイント
昨日、参議院で2023年度の政府予算が決定しました。厚生労働省は以下の3点を重点要求として概算要求をしており、政府案通り予算が決定したことにより、来年度、この内容が進められていくことになります。
Ⅰ.コロナ禍からの経済社会活動の回復を支える保健・医療・介護の構築
Ⅱ.成長と分配の好循環に向けた「人への投資」
Ⅲ.安心できる暮らしと包摂社会の実現
企業として実務に影響が出てくる「Ⅱ.成長と分配の好循環に向けた「人への投資」」に係るポイントは以下のとおりです。
■人への投資パッケージ、円滑な労働移動の推進等
新しい資本主義の実現に向け、2024年度までの3年間に4,000億円規模の予算を投入する施策パッケージを講じ、「人への投資」の抜本的強化を図り、デジタル分野等の人材育成、社会全体で学び直しを促進するための環境を整備するとともに、成長分野への円滑な労働移動が可能となるよう支援する。
○人への投資パッケージ 1,101億円(1,019億円)
・人材開発支援助成金による企業におけるデジタル人材等の育成の推進
・キャリアアップ助成金による正社員化の推進
・専門実践教育訓練給付の充実及び支援の拡充
・受講者の特性に対応した新たな教育訓練手法のコンテスト方式による選定、開発・試行
・学び直しを後押しするキャリアコンサルティング機能を拡充したキャリア形成・学び直し支援センター(仮称)の整備
・産業雇用安定助成金による在籍型出向を活用したスキルアップ支援の新設
・特定求職者雇用開発助成金による成長分野への労働移動の円滑化支援 等
○円滑な労働移動、人材確保の支援 524億円(460億円)
・産業雇用安定助成金による在籍型出向を活用したスキルアップ支援の新設(再掲)
・ハローワークの専門窓口(人材確保対策コーナー)での就職支援の強化
・都市部から地方への移住を伴う地域を越えた再就職等への支援
・資格取得コースや企業実習付きコースの委託費等の上乗せによるデジタル分野の職業訓練コースの設定等の推進
・介護の仕事の魅力発信、介護分野における外国人材の受入環境整備 等
■多様な人材の活躍促進
全ての人々が意欲・能力を活かして活躍できる環境を整備するため、女性活躍推進、高齢者の就労・社会参加、就職氷河期世代の活躍支援等を図る。
○女性の活躍促進 49億円(48億円)
・男女の賃金の差異の開示等を通じた女性活躍の更なる促進
・子育て中の女性の支援に取り組むNPO等へのアウトリーチ型支援の推進な
どマザーズハローワークにおける就職支援の強化 等
○高齢者の就労・社会参加の促進 272億円(248億円)
・ハローワークにおける生涯現役支援窓口などのマッチングの支援
・シルバー人材センターのデジタル化等の運営基盤の強化による地域の多様な
就業機会の確保及び提供 等
○障害者の就労促進 186億円(187億円)
・中小企業をはじめとした障害者の雇入れ等の支援
・精神障害者、発達障害者、難病患者等の多様な障害特性に対応した就労支援
・雇用施策と福祉施策の連携による重度障害者等の就労支援 等
○外国人に対する支援 104億円(102億円)
・外国人求職者等への就職支援、企業での外国人労働者の適正な雇用管理の推
進、外国人労働者の雇用管理や労働移動の実態把握のための統計整備
・外国人技能実習機構における実地検査等の実施による技能実習制度の適正な
運用、技能実習制度の適正化に向けた調査・研究 等
○就職氷河期世代、若年者・新規学卒者の支援 834億円(779億円)
・就職氷河期世代に対するハローワークの専門窓口における専門担当者による
就職相談、職業紹介、職場定着までの一貫した伴走型支援の強化
・地域若者サポートステーションにおける就職氷河期世代を含む就労自立支援
・新卒応援ハローワーク等における多様な課題を抱える新規学卒者等への支援
等
■多様な働き方への支援、 最低賃金・賃金の引上げに向けた事業者への支
援、労働者・フリーランスの働く環境の整備等
誰もが働きやすい社会の実現に向けた働き方改革を着実に実行するため、個々の希望に応じた多様な働き方の選択とその活躍が可能な環境の整備を行う。
また、最低賃金・賃金の引上げに向けた中小企業・小規模事業者の生産性向上の取組の支援、看護などの職場における処遇改善を引き続き実施する。
○多様な働き方の実現 131億円(147億円)
・良質なテレワークの導入・定着促進
・「多様な正社員」制度に係る導入支援等の実施
・男性が育児休業を取得しやすい環境の整備や、円滑な介護休業の取得・復帰
に向けた企業の取組等に対する支援
・労働者協同組合についてのNPO等からの円滑な移行 等
○働き方改革の推進、ハラスメント対策 195億円(168億円)
・時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務への労働時間短縮等に向けた支援
・働き方改革推進支援センターによる働き方改革に関する相談支援
・ワーク・ライフ・バランスを促進する休暇制度・就業形態の普及
・働く人のワークエンゲージメントの向上に向けた支援
・職場におけるハラスメント(就活ハラスメント、カスタマーハラスメントを
含む)撲滅のための事例収集、周知・啓発、相談支援 等
○最低賃金・賃金の引上げに向けた⽣産性向上等の推進、非正規雇用労働者への
支援、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保、労働者・フリーランスの働く環
境の整備 1,249億円(1,209億円)
※デジタル庁計上分含む
・事業場内最低賃金引上げのため業務改善を行った事業者に対する支援の強化
・生活衛生関係営業者の収益力向上の推進、デジタルを活用した店舗力強化の
支援
・介護及び障害福祉分野へのICT・ロボットの導入等による生産性向上を通
じた、安全・安心なサービスの提供の推進
・キャリアアップ助成金による非正規雇用労働者の正社員化・処遇改善を行う
企業への支援(一部再掲)
・ステップアップを目指す非正規雇用労働者等に対する求職者支援制度による
支援
・無期転換ルール等の円滑な運用に向けた周知
・被用者保険の適用拡大に当たっての周知・専門家活用支援
・フリーランス・トラブル110番、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイ
ト「こころの耳」による相談支援の充実 等
○看護、介護、障害福祉の現場で働く方々の処遇改善の引き続きの実施
381億円(381億円)
新しい取り組みもありますが、全体的にはこれまで進められたきた取り組みの強化・推進という印象も大きく受けます。
参考リンク
財務省「令和5年度予算」
https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2023/fy2023.html#R5kokkai1
厚労省「令和5年度厚生労働省所管予算概算要求関係」
https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/23syokan/
(宮武貴美)