中小企業の58.2%(昨年同時期+12.4pt)が賃上げを実施予定

 今春の春闘は満額回答が相次ぐという歴史的な展開を見せていますが、中小企業はこれに追随できるのでしょうか。本日は、日本商工会議所・東京商工会議所が実施した「最低賃金および中小企業の賃金・雇用に関する調査」調査結果の中から中小企業の人手不足と賃上げの状況について見ていくこととしましょう。なお、本調査は全国47都道府県の中小企業6,013社を対象に実施されたもので、回答企業数は3,308社(回答率:55.0%)となっています。

 調査結果のポイントは以下のとおりです。

  1. 「人手不足」と回答した企業は64.3%。昨年同時期から3.6ポイント増加。
  2. 人手不足の対応としては、「正社員を増やす」が80.7%で最多。「IT化、設備投資による業務効率化・自動化」(30.5%)など、業務効率化や生産性向上の取組は約3割。
  3. 魅力ある企業・職場づくりとしては、「賃上げの実施、募集賃金の引上げ」(66.3%)との回答が最多。前回調査(2022年7月~8月)から9.3ポイント増加。
  4. 2023年度の賃上げ予定については、「賃上げ実施予定」が58.2%(昨年同時期+12.4ポイント)。
  5. 賃上げ率は、近年の中小賃上げ率(2%弱)を上回る「2%以上」とする企業が6割弱(58.6%)、足下の消費者物価上昇率を概ねカバーする「4%以上」は2割弱(18.7%)。
  6. 賃上げを予定している理由は、「従業員のモチベーション向上」(77.7%)が最多、「人材の確保・採用」(58.8%)が続く。「物価上昇への対応」(51.6%)は昨年同時期より26.7ポイントの大幅増。
  7. 賃上げを見送る理由は、「自社の業績低迷、手元資金の不足」(68.4%)が最多。昨年同時期より7.8ポイント増加。

 このように人手不足や物価高を理由に賃上げを行う中小企業が過半数を占めるという結果になっています。一方で、業績低迷で賃上げを行うことができない企業もあり、対応の二極化が進みそうです。転職により賃金の上昇を図るという考え方が強まる中、賃上げができない企業からの人材流出が懸念されます。


参考リンク
日本商工会議所・東京商工会議所「「最低賃金および中小企業の賃金・雇用に関する調査」集計結果(2023年3月28日)」
https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1033793

(大津章敬)